週刊金曜日 編集後記

1246号

▼「トイレのような臭さ」(朝日新聞デジタル)。東京五輪・パラリンピック水泳会場での話である。8月11日、東京・お台場で「オープンウォータースイミング」のテスト大会に出た選手の感想だ。
 東京湾には大雨時などに浄化しきれない「生下水」が放流される。「こんな汚れた海で泳ぎたくない」というのが選手のホンネだろう。
 しかし元をたどれば、下水は私たちも利用する水洗トイレなどから出るわけで、オリ・パラ以前の話だ。もし大会を返上しても「生下水」問題はそのまま残る。
 汚水と雨水を一緒に流す「合流式」から、雨水を別の下水管に分けて流す「分流式」に切り替えるのが改善策のひとつだが、水ジャーナリストの橋本淳司氏によれば、東京で切り替えが完了するまでにあと30年はかかるという(14日付ヤフーニュース個人)。
 こうなったらもうみんなで「のぐそ」(本誌2018年4月6日号参照)するしかないか。(斉藤円華)

▼祖母が健在だった頃は、お盆の「迎え火・送り火」はかならず行なわれた。こんなことして(いろんな人が)帰ってくるのかなあと思っていたが、最近は迎え火をしなくとも帰ってくる。
 それも具象化されている。ときには蝶であったり、ヤモリであったりする。今年は蝉だった。丸1日、自宅の網戸にとまり静かにしていた。朝起きてもその場にたたずみ、おもむろに激しく鳴いたあと旅立っていった。同居人は「また今年もおかあさん帰ってきたわね」と、どこまで本気なのかわからずにつぶやく。
 ヤモリのときはたいへんだった。なんと「ごきぶりホイホイ」に張りついてしまったのである。カッターと綿棒とベンジンで何とか救出した。では、ゴキブリなら(殺しても)いいのかという矛盾に答えが見つからず、それ以来「ホイホイ」はやめた。
 若くして逝ってしまった友人たち。彼らの記憶は歳を重ねるたびに濃くなっていく。(土井伸一郎)

▼今年も体にこたえる猛暑だった。それなのに、わが家のエアコンの調子が悪い。もともと冷えが弱いと感じていたが、運転中にしばしばタイマーランプが赤く点滅して、送風が止まるようになった。まるでウルトラマンのカラータイマーみたいだ、などと言っている余裕はない。買い換えるか、いや完全に壊れてはいないので、出費を考えると業者に頼んで掃除してもらうか、いずれにしろ悩ましい。
 気ばらしにテレビ番組を探していたら「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」の再放送を発見。俳優の六角さんが北海道の釧網本線を旅した。列車に乗車中だけ呑んでいると思いきや、降車後もバッグから缶ビール、カップ酒を取り出して、海をながめてはグビリ、廃線跡を訪ねてはグビリ、ひたすらグビリ。芋焼酎の工場では、見学をするか試飲をするか乗車時刻の関係で選択を迫られれば、迷わず試飲。自由気ままに呑みまくる六角さんがいい。なんだか呑みたくなってきた。六角さんに乾杯。(原口広矢)

▼7月26日、「世界最大の花」と呼ばれるショクダイオオコンニャクが東京都調布市の神代植物公園で4年ぶりに開花したことを家人から聞く。一般的には7年に一度咲く幻の花とも言われ、開花は概ね2日程度。夜咲きで開花当日の深夜に大きく開き、翌日の朝方には、花は閉じ始めるという。
 翌日の午前中、自転車に乗って花を見に行く。素晴らしかった。肉が腐ったような匂いがするとも言われているが、それほど強烈な匂いではなかった。激レアな時間に咲く神秘的なその瞬間に立ち合うことができて、本当にラッキー。
 大袈裟かもしれないが、植物の成長を体感することで、あらためて植物も動物もそして人類も、この自然界のなかで「生かされている」のだなあ、と思うのでした。
 29日、〈早朝は、まだ立っていたそうですが、8時過ぎに付属体が倒れました。なんだか「皆様、ご鑑賞頂きありがとうございました」と首を垂れているようです〉とツイートがあった。(本田政昭)