週刊金曜日 編集後記

1243号

▼今年4月、入国管理局が法務省の内部部局から出入国在留管理庁へ格上げされた。その入管庁の外国人収容所でハンガーストライキが相次いでいる。非正規滞在者をすべて収容するという建前のもと、入管庁は非正規滞在者の恣意的な収容を繰り返している。非正規滞在者のなかには難民申請者もいるが、入管庁はお構いなしだ。刑務所のような収容所は、劣悪な食事や医療がたびたび報道されているが、いっこうに改められる様子もない。健康不良を訴える被収容者を放置した結果、亡くなってしまったケースがあるにもかかわらずだ。刑務所と違っていつ出られるかわからない被収容者は危険なハンストに望みをつなぐほど追い詰められている。
 かつて日韓法的地位協定や入管法に関わった池上努という入国管理局の法務官僚が(外国人は)「煮て食おうと焼いて食おうと自由」と書いた書籍が国会で問題になった。半世紀近く経ったが、在日外国人の人権状況は変わっていない。不当な収容はいますぐやめさせなければならない。(原田成人)

▼ラグビーW杯まであと2カ月を切ったのにチケットが手に入らない。日本戦を見たいわけでない。この機会を逃したら、もうナマで見ることができないであろうヨーロッパのチーム(イングランド・ウエールズ・スコットランド・アイルランドにフランス)、そしてスプリングボックス(SA)、ワラビーズ(AU)、オールブラックス(NZ)のプレーを目の前で見たいのだ。
 でももういい、あきらめた。ナマで、その場に行って見たいものなど考えたらたくさんある。それに毎年7月はカラダが三つくらいないと間に合わない。間に合っても金がない。ピレネー山脈でツール・ド・フランスを1週間見たいし、ウインブルドンのセンターコートで男女の決勝を観戦したあと、ジ・オープンを見に北アイルランドのリンクスへ飛んで行きたい。途中で名古屋にワープして炎鵬の勝ち越しと、鶴竜・白鵬戦を砂かぶりで見たい......無理だ。 
 すべては円だ。ラグビーボールも車輪もボールも土俵も。円にインスパイアするけれど、テレビの平面画面でガマン。(土井伸一郎)

▼昨年の今頃、本欄で梅干し作りを始めたことを書いたら、反応や疑問をいくつかいただきました。私は無農薬の梅と自然塩を使い、塩分は20%。梅酢は魚料理の下拵えやドレッシングなどとして利用しています。梅干し手作り派は結構いらっしゃるのですね。今年7月は雨や曇りが多く、いつになったら土用干しできるのかと気をもむ方も多かったのでは。
 ただ実は、梅仕事より前から私がはまっているのは山椒仕事。山椒の実を枝から一つひとつはずし、辛みを調整しながらあく抜きし、と下拵えに手間はかかりますが、冷凍すれば1年保つし佃煮も自分好みにできます。部屋に満ちる芳香も嬉しい副産物。仕事から帰って深夜にちまちまと作業をしており、楽しそうだと思ったのか最近は夫も一緒に枝はずしをしています。以前、ちりめん山椒を作って友人にあげたら「全部手作り? え? 漁に行ったの?」と言われ大笑いしたことも。もちろん、ちりめんは買ったものです。この友人、今年、山椒仕事に挑戦したそうで、私たち「保存食クラブ」を結成しました。(宮本有紀)

▼今、横浜市民ギャラリー1階展示室(桜木町駅徒歩10分)で『「帝国日本」の残影 海外神社跡地写真展 』が開催されている(神奈川大学非文字資料研究センター主催・8月4日まで、10時30分~17時30分)。
 かつて本誌の写真企画でも紹介した写真家の稲宮康人氏が10年にわたって撮影してきた海外神社跡地の写真を中心に海外神社関連資料も併せて紹介する展示だ。戦前の日本人はあらゆる土地に神社を建てていた。旧植民地であった台湾や朝鮮半島だけでなく、傀儡国家満州国や、委任統治領の南洋諸島、占領地の中国・東南アジアにも神社が建てられ、日本人行くところ神社あり、といわれたほどである。海外神社の総数は1600社以上とも言われているが、その正確な数や全貌は全く不明である。今回の展示を通して、近代日本の「記憶されない歴史」を改めて考える機会にしたいと思う。
 8月3日(土)14時から中島三千男氏と稲宮康人氏によるギャラリートーク、8月4日(日)14時から稲宮康人氏の展示解説が行なわれる。(本田政昭)