週刊金曜日 編集後記

1240号

▼今月をもちまして編集部を去ることになりました。2002年夏の入社以来、多くの読者の皆様からお手紙や、あるいは直接のお声がけで温かい励ましをいただき深く感謝します。またこの場をお借りして、全国の旧国労闘争団の組合員とご家族様、地域の反基地・護憲運動の市民団体の方々、そして国内外の学者・研究者の諸氏らに対し、取材で示された格別のご好意に心より御礼申し上げます。今後は自分なりの流儀で新たな戦線を構築するつもりですが、読者の皆様とともに「行動する良心になりましょう。行動しない良心は悪の側です」という、故金大中氏の最後の演説での訴えを魂に刻んで歩み続けます。振り返るとこれまで、書けども書けども不正義と悪に満ちた現実の壁を思い知らされ、しばしば重い無力感と絶望感にさいなまれてきました。しかしそのたびに再びペンをとれたのは、やはり皆様がジャーナリズムという現場を守ってくださり、そこで死力を尽くすことに共感していただいたからでしょう。その意味で私は、得難い日々を生きてきました。改めて深謝申し上げ、本誌での最後の一文とします。(成澤宗男)

▼6月までのクール、ドラマベスト3は「インハンド」「わたし、定時で帰ります」「きのう何食べた?」。特に「何食べ」はゲイカップルの日常を丁寧に描いていて、なにか大きな事件が起きるわけではないけれど、確実に2人の生活が深まっていく様子に、一緒に暮らすということの大切さを実感。もう一つの主役ともいえる料理は、ちょっと頑張れば作れそうで、しかも美味しそうな絶妙の難易度。夜中の味噌ラーメン(袋麺)は、どうしても食べたくて早速仕入れてきました。
 そして、本物の日常を通して共存について考えさせられる想田和弘監督のドキュメンタリー映画『Peace』上映会を開催します。上映後のトークショーのゲストは小島慶子さんです。8月9日(金)19時~東京・日比谷コンベンションホール、先着200名。ご予約はMail・book@kinyobi.co.jpまたはFAX・03・3221・8522まで。件名に「想田監督上映会」と明記。FAXの場合、必ずご自身のFAX 番号を添えてください。メールの場合は@kinyobi.co.jpからのメールを受信できるように設定願います。お待ちしています。(志水邦江)

▼7月某日、60歳になった。本誌のAD(アートディレクター)として創刊3周年がすぎた頃に入社し、気がつけば22年の月日がすぎていました。会社の役職定年の規定により、誕生日以降は、編集部員(兼デザイナー)として働くことになります。今後、本誌はADを置かず、各デスクが協力しながら、全体のビジュアルとデザインの方向性をかじ取りすることになりました。良い意味で、今までのものを超えていく新しい誌面づくりを期待したいと思います。
 先日、自宅の最寄駅の改札近くで笑顔のおじいさんからポケットティッシュを渡された。偶然にもその日は60歳の誕生日で、添付されたチラシには「シルバー人材センター入会説明会」の案内が載っていた。〈60歳以上の方ならどなたでも入会できます〉とのこと。うーむ。あの老人は、一瞬にして道ゆく人の中からターゲットとなる人材を見抜いたということか。仕事柄、自分は年のわりに見た目が若いと思っていたのだが、どうもそうでもないらしい。かりに入会説明会に参加して会員になったら、一番下っ端のペーペーなんだろうな。なんか怖い。(本田政昭)

▼笹に、七夕の短冊が揺れている。毎年のことだが、この時期は通勤路にある色とりどりの「願いごと」が気になって読んでしまう。
 芸能人名+会えますように、というまさしく神頼みや、「〇〇になれますように」という就職祈願系はほほえましい。親族の病気が平癒しますようにとか再発しませんようにという、切実な健康関係の願いごとには共感。「このままの幸せな生活が続きますように」「すべての人が平和に暮らせますように」という祈りも、実現を心から願う。ただ、この祈りは天に捧げるだけでなく、自らの選択や行動で実現できる部分もある。
 民主政治を求め命をかけて闘ってきた人たちのおかげで、私たちは選挙権を手に入れた。いま私たちは、血を流さずとも投票で意思を表明できる。資産のある1%ではなく99%の庶民の「幸せな生活」実現を目指すのは誰か、を考えて行動したい。戦争をしていないだけでなく、差別や貧困のない公平公正な社会としての「平和」を求めるなら、「どこに入れても同じ」「投票しなくても同じ」ということは絶対にない。(宮本有紀)