週刊金曜日 編集後記

1235号

▼本多勝一編集委員の連載「俺と写真」を休載すると(たとえば5月31日号)、本多編集委員の体調を心配する声が届きます。連載を楽しみにしている皆さまには申し訳ありません。体調不良ではなく編集部の都合です。急いで掲載したいニュース記事が飛び込んできた時、本多編集委員にお願いして休載していただいているのです。
 本多編集委員は元気です。本多ご夫妻が先週、「結婚のお祝いをしたい」と私たち2人を招いてくださり、ご自宅近くの中華料理店で、料理5、6品とともにビールや紹興酒を楽しみました。80歳代後半とは思えない健啖ぶりです。
 お話によると、毎日、かなりの距離を歩いているそうです。本多編集委員は「登っていない最後の3000メートル峰、聖岳に今夏、登りたい」と意欲的ですが、お連れ合いさんは「高山で万が一があったら......」とさすがに止めようとしています。聖岳がそびえるのは、山が深い赤石山脈でもとりわけ奥深い場所なのです。
「俺と写真」では今号で北方領土問題をめぐる見解が示されます。ベトナムや米国、中国でのルポもこれからです。先が長い連載をお楽しみください。(伊田浩之)

▼5月中旬から10日間ほど光州、ソウルに行ってきた。光州では5・18民主化運動39周年の記念式を取材した(本誌5月24日号「金曜アンテナ」既報)。式の終了後、地元の5・18記念財団前常任理事の金良來さん(63歳)の案内で、犠牲者の墓や市民軍が最後まで立てこもった旧全羅南道庁跡などを訪れた。
 5・18民主化運動記録館を訪れた際、金さんからおにぎりをいただいた。当時、光州ではデモ参加者におにぎりが配られた。映画『タクシー運転手』にも登場するエピソードだ。白いコメを塩とごま油で味付けして握っただけの何の変哲もないおにぎりだったが、噛みしめながら食べた。ソウルでは、1987年6月抗争の引き金となったソウル大生拷問致死事件の現場なども見学した。
 韓国の民主化がいかに尊い犠牲の上に実現したのかを改めて実感する旅となった。その後、韓国で最もリベラルな週刊誌の一つ『時事IN』に1週間ほど滞在し、韓国の雑誌事情について取材した。韓国も活字離れは深刻だ。生き残るためにさまざまなアイディアを出し合って実験する姿に学ぶ点が多かった。本誌でもおいおい紹介したいと思う。(文聖姫)

▼出版取次大手の日販は2018年度の決算が赤字だったと発表した。日販のニュースリリースによると、グループの売上高は、雑誌を中心とした書店の店頭販売の落ち込み、廃業店の増加等により5・8%減って5457億円だった。取次事業は雑誌、書籍の大幅な減収と物流コストの上昇に伴い営業損失3億円を計上したとのこと。業績回復のため本業(取次事業)の復活に向けて取り組むそうだが、10月からの持株会社体制への移行は、本業が立ちゆかなくなったときのリスクヘッジのような気がしてならない。太洋社、栗田出版販売が倒産して日販までも赤字になった。書店、取次、出版社が負のループに陥っているようだ。
 とはいえ、出版社としては書店に本を売ってもらわなければならない。特に既刊本を売るための常備寄託は欠かせない。今年も常備入れ替えの季節になった。売れ行き上位『ひとめでわかるのんではいけない薬大事典』、『日本会議と神社本庁』、『私の1960年代』などに加え昨年の新刊『毒死列島身悶えしつつ』、『新装版 電通の正体』、『猫とビートルズ』を含むセットを組む予定。弊社常備取り扱い書店については、業務部までお問い合わせください。(原口広矢)

▼鉄道博物館(埼玉県さいたま市)に行ってきた。SL(蒸気機関車)や国鉄時代の車両に魅力を感じる私にはたまらない場所だ。
 広大な館内フロアに並ぶ実物車両や鉄道設備にうっとり。気動車(ディーゼルカー)の車窓には「高原鉄道」で知られるJR小海線の沿線の映像が投影され、ホントに鉄道で旅している感覚だ(あまりにリアルで乗り物酔いになった)。
 D51型SLの実物の運転台を使ったシミュレータは、各種レバーや弁装置を複雑に操りながらSLを走らせる疑似運転装置だ。風景の映像や走行音にあわせて運転台が揺れる。私のような素人でも走ることは走るが、停止位置にぴたりと止まらない。
 他にも見所はたくさんで、午前10時から夕方まで目いっぱい遊んだ。その思い出をたどりながらこれを書いているが、後からモヤモヤしてきた点もある。
 国鉄民営化以降、車両の乗り心地は良くなり、ICカード等で便利にもなった。しかし、採算や効率を追求する一方で夜行列車や長距離普通列車は削減。ボックスシートも減ったし、二段窓は都内ではまず見かけない。のんびりと鉄道旅を楽しむ余地は狭まった気がするんだよね......。(斉藤円華)