週刊金曜日 編集後記

1218号

▼友川カズキさんへの取材は7時間を超えた。暮れの30日には川崎競輪場までのこのこついて行きあっけなく敗北。この日は寒く、元日の夜から発熱、4日には首が回らなくなった。マネージャーの大関直樹さんと、撮影をお願いした編集者の佐々木康陽さんには大変お世話になりました。
 永山則夫の話は紙幅の関係で掲載できず残念。堀川惠子著『永山則夫 封印された鑑定記録』(講談社文庫)をめぐって友川さんは1時間以上語られた。石川義博医師の執念の鑑定書、それを掘り起こした堀川さんの気迫。鑑定書を読んだ永山が「これはオレのことじゃない」と言いながらも絞首刑の日まで鑑定書を持ち続けていたのはなぜか。議論は尽きなかった。また「白菜漬け」の塩の"塩梅"では多岐にわたり深い考察が行なわれたことを付記しておきたい。
 2月16日(土)のライブ予約は「APIA40」(03・3715・4010)まで。前売3500円、開演は19時です。(土井伸一郎)

▼「たとえ、たった一人でも傷つく人がいるとしたら、それは差別語ですよ」。十数年前、社内で差別語についての学習会を開いたとき、当時本誌編集委員だった辛淑玉さんが話してくれた言葉が忘れられない。以来、より一層差別語への想いを強くしながらゲラと向き合ってきました。
 二十数年間『週刊金曜日』で校正・校閲の仕事をしてきましたが、このたび退職することになりました。この場を去るにあたりとくに思い出されることは、「OL」という言葉が掲載されてしまったとき「こんな言葉を使う『週刊金曜日』にがっかりしました。定期購読をやめます」という抗議を受けたこと、編集後記で「老人」を高齢者という言葉に置き換えていると書いたとき、「高齢者も差別語だと思いますよ」とご指摘を受けたことなどです。差別語に向きあうことは、自分自身の生き方そのものにも向きあうことでした。指摘してくださった方々に心から感謝しています。長い間ありがとうございました。(柳百合子)

▼北朝鮮ミサイル問題では、徒に危機を煽るマスコミ報道に辟易したが、今度の標的は韓国のようだ。
〈「韓国疲れだ。日本を米西海岸沖に移したい」 防衛省幹部ぼやき〉この見出しは保守系メディアのそれではなく『朝日新聞』1月26日付の朝刊。中身は〈レーダー照射問題などでの対立で、防衛省内で韓国に対する不満が高まっている〉〈「韓国疲れだ。嫌だと思ってもお隣さん。日本列島を(米西海岸の)カリフォルニア沖に移したい」〉〈「うまくいけば『日本党』で上院で多数派に」〉これが、ネットの書き込みではなく大新聞の一般記事であることに愕然とする。匿名官僚の暴論を無批判に掲載。韓国を叩き、米国にも勝てるなど、悪質な印象操作でしかなく、そこに報道価値があるのか甚だ疑問。
 安倍政権は参院選まで隣国との関係を改善させる気はないだろう。敵国を作り支持率を上げるのが独裁国家の常套手段。その権力が暴走しないように監視するのがメディアの役割なのだが。(尹史承)

▼現象に言葉がつくと、ああそういうことだったのかと納得する。相手の知識を確認する前に説明したがる男性が不思議だったが「マンスプレイニング(男性が女性に対し偉そうに解説・助言すること)」を知った時は膝を打った。そういう人に限って説明が中途半端かつ女性に知識があると不機嫌になったりして面倒くさい。女性なら大抵(特に若い時に)経験しているから、すぐにわかるはずだ。
 先日、電車や道路などの公共空間やネット上のハラスメントの実態調査が発表された(本誌9ページのジェンダー情報参照)が、「ストリートハラスメント」「オンラインハラスメント」と名付けられると、この現象はこれにあたるのではないかと気付き、対処もしやすくなる。ここ数年でさまざまなハラスメントが注目されるようになったことを「生きにくい社会になった」と思う人もいるようだが、「立場の弱い側が我慢してきた生きにくさをもたらす現象が認識され始めた」のではないだろうか。(宮本有紀)