週刊金曜日 編集後記

1216号

▼昨年末にインドネシアを襲った津波、住民への水の供給、水の質は守られているのだろうか。
 昨年11月に日本で封切られたマイケル・ムーアの最新作『華氏119』では、2014年当時、米ミシガン州フリント市で、鉛の入った水道水を長い間飲まされた市民の公害が取り上げられている。市民の抗議をかわすため、州知事に依頼され現地を訪れたオバマ前米大統領は、壇上で汚染されていないペットボトルの水を差しだされたとき、あえて水道水を所望するパフォーマンスを演じた。が、コップに口をつけるだけに終わったという。逸早く映画を見に行った知人からそのことを教えられたのは、ちょうど日本の国会で水道法改正案が、無責任極まる審議に終始していた頃だった。市民のライフラインを守るために必要な費用を削減するため、水道事業を民間に委託しようとした州知事のしたことが許せない。安倍政権もそんな危険性を孕む水道の民営化を目論んでいる。「水の質は二の次」とは言わせぬ。(柳百合子)

▼この正月は高尾山(東京都八王子市)に登った。標高だけ見れば599メートルのどうということはない低山だが、交通の便がよく、また多くの生きものが暮らす自然豊かな場所でもある。
 奥多摩やさらに遠くの山に行くのがおっくうで、しかし山を歩きたい時にはつい来てしまう......、私にとって高尾山は便利でありがたい山なのだ。高尾山口駅のとなりには温泉もあるし、夏にはケーブルカーで上がってビアガーデンでの1杯も楽しい。
 さて正月の高尾山登山の話である。薬王院へと至る舗装された1号路ではなく、土の上を歩き、自然の気配がより濃い6号路を登る。カタカタ、とキツツキのドラミングが沢筋に響く。
 最後の急登を登り上げれば山頂だ。展望がすばらしい。雪を抱いた富士山。はるか遠く、南アルプスの頂は雲に隠れて残念。目を転じれば都心のビル群、陽光きらめく相模湾には江の島が浮かぶ。この絶景のパノラマが見たくて、また高尾山に足が向く。(斉藤円華)

▼1月4日、初出社。仕事をさくさくとかたづけて、崎陽軒の焼売を手土産に、行きつけのスナック芽寿林へお年賀。年末に酩酊したお詫びである。今年こそ飲み過ぎには気をつけよう。
 6日、自宅のパソコンがおかしい。年賀状の宛名をExcelで管理しているのだが、ファイルを開くと「Microsoft Excelは動作を停止しました」「問題が発生したため、プログラムが正しく動作しなくなりました」という表示が出て、強制終了してしまう。何度やってもだめであきらめかけたが、ネットで調べてみたら、同じ現象の記述を発見。曰く原因は更新プログラムのバグらしい。該当のプログラムをアンインストールしたら、あら不思議、ファイルが開いた。
 7日、出社してExcelを開くと何の問題もなかった。どうやら更新日のタイミングが悪く当たった自分は新年早々運がいいのか悪いのか。新元号対応のプログラムの不具合だそうだ。昨今の元号報道にもうんざりだ。もう元号なんてやめたらい・か・が。(原口広矢)

▼厚生労働省によると、15歳~39歳の各年代の死因第1位は自殺。そんなデータを裏付けるかのように、和歌山県白浜町の観光名所で自殺の名所でもある三段壁には、20代後半から40歳手前の自殺志願の若者がやってくると、牧師の藤藪庸一さんは言う。ドキュメンタリー映画『牧師といのちの崖』(監督・加瀬澤充 URL・https://www.bokushitogake.com)の一場面だ。
 映画は、さまざまな理由でここにたどり着いた若者に共同生活の場を提供し、生きていく術をともに模索する藤藪さんの活動を追う。驚いたのは、以前は親がすでにいない自殺志願者が多かったが、今は親はいるが行き来がない、困っていることを伝えられる関係や帰れる場所ではない、などのケースが増えているということだ。公開は1月19日(土)~、ポレポレ東中野。(吉田亮子)