週刊金曜日 編集後記

1211号

▼韓国大法院の元徴用工への賠償判決は日本メディアの歴史修正主義への傾斜を改めてはっきり見せつけた。『朝日新聞』ソウル支局長牧野愛博署名で書かれた10月31日朝刊1面の記事には、韓国では〈政治が世論に迎合しやすい例えとして、「法の上に『国民情緒法』がある」ともいわれる〉という目を疑うような文言が書かれている。記事冒頭には〈判決は日本の政府や企業にとって受け入れられないものだ〉と書かれ一見中立風ではあるが、牧野氏の立場が奈辺にあるかは自明だ。同日の社説もほぼ同様の見解で、今までの「友好」が壊れるので、「韓国政府は、事態の悪化を食い止めるよう適切な行動をとるべき」と言う。戦争責任もまともに果たさぬままの「友好」など驕り高ぶった日本社会の妄想にすぎない。
「新聞は社会の木鐸」と言うが、歴史への反省もなく、為政者の命令を伝えるだけの木鐸は民主主義社会に不要である。(原田成人)

▼11月6日。『週刊金曜日』の音訳版を長年手がけた「テープ版読者会」代表の舛田妙子さんの一周忌だった。「舛田さんという太陽がなくなって、テープ版読者会という星系は消滅してしまいました」。偲ぶ会で偶然再会した高校時代の恩師からはこんなメールが来た。
 お骨は、事務局長の矢部信博さんの家にある。後日矢部さんに電話すると、「起床は11時。それ以降に来て」と言われた。深夜から早朝に及んだ音訳作業の"習慣"で眠る時間が遅いのだ。花を持参したいとメールすると、「花はユリ、菊は嫌い」と返信が。菊は嫌い、「花ならユリ」と読み間違えた私は、ユリの花束を持参。ユリも嫌いなのにと笑う矢部さん。舛田さんはネモフィラが好きで毎年春に観に行ったという。家には舛田さん蒐集のミニチュアサンプルも。相手の好きな物は意外と知らないもので、あらためて舛田さんを知った気持ちになった。(渡部睦美)

▼「『資本論』講座──第1巻を読み解く」が来年、東京「池袋コミュニティ・カレッジ」(URL・https://www.7cn.co.jp/7cn/culture/cc/)で開かれます。講師は鎌倉孝夫・佐藤優の両氏。今年8、9月に予定していた講座が、セブンカルチャーネットワークさんと組むことでさらに受講しやすくなりました。募集は12月1日開始。前出のサイトからお申し込み下さい。
 日程はすべて土日。1時間半の講義が1日3回(10:30~17:00・初日のみ~18:00)。1月20日、2月9・10日、3月2・23・24日の6日ですから計18講義となります。しっかり時間をかける、わかりやすい講座です。受講料は1講義3000円(税別)ですが、通しての受講をおすすめします。
 資本主義経済の基礎となる商品の研究からはじめ、貧富の差がなぜ拡大してゆくのかなど、資本主義の仕組みをとらえます。『資本論』がわかればいまの社会の成り立ちがわかるのです。(伊田浩之)

▼11月某日、北京に住む友人から、突然「今、東京にいるの。明日一緒にご飯食べない?」と連絡が。何でも急に休みが取れたので、東京に来たという。
 彼女は日本が大好きで、今年に入ってから来日四度目。初めて日本に来た十数年前は「日本はなんて物価が高いんだ」と思ったそうだが、最近は来るたびに「日本の物価は安い」と感じるそうだ。その理由は、彼女自身ががんばって働いて収入を増やしてきたこともあるが、相対的に日本は今、物価が安い国として外国人観光客の人気を集めている。そりゃそうだ。今どきワンコイン(500円)でランチが食べられる国なんて、ほかにないよね。
 彼女から聞く北京の不動産価格高騰の話は、日本とはまったくスケールが違って、何回聞いても信じられない。そんな北京にマンション二つ持っているあなたを、私は心底応援します。(渡辺妙子)