週刊金曜日 編集後記

1202号

▼アンテナ欄をご覧になって「あれ、さらん日記がなくなっちゃった~」と思った方、ご安心ください。今週号から、「さらん日記」は1ページになってアンテナ欄から独立します。
 2007年7月6日号からのアンテナ欄リニューアルに伴い、「さらん日記」が初登場して11年。毎週毎週、作者と案をやりとりして号を重ねるうちに、そんなにも時が経ったのかと感慨深い思いです。そういえば、福田康夫氏や麻生太郎氏と比べて、安倍晋三氏の描きにくさに悩まれていた時期もありました。いまは克服されていますが、作者が安倍政権に早く終わってほしいと願っているのはそれも理由の一つかもしれません......私も作者を困らせる安倍政権を早く終わらせたいと思います。
 本当は「さらん」が各地で活躍しなくてすむ社会になればいいのですが、残念ながらまだまだネタは尽きないようです。引き続き、おつきあいくださいますよう、お願い申し上げます。(宮本有紀)

▼「何人も性的指向、性自認等の公表に関して、いかなる場合も、強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない」。これは2015年、一橋大学院生が同性愛者であることを同級生にアウティング(公表)され自死してしまった事件を機に制定された東京都国立市の「条例」8条2項である。学生の遺族は、同級生と、適切な対応を避けていた大学双方を提訴。同級生とは和解が成立したが、大学側とは裁判が継続している。
 今年7月25日の証人尋問では驚くべき証言があった。それは、学生が亡くなった翌日に「ショックなことをお伝えします。息子さんは同性愛者でした」と大学側が伝えたというのだ。遺族側は「同性愛ではなくアウティングされたことを気にしていた」のだと証言。この認識の違いを大学側はどこまで受け止めることができただろう。大学側の対応は、性的少数者に対する差別以外の何物でもない。次回期日は10月末だ。(柳百合子)

▼入社当初から業務部で定期購読を長く担当したが、少しの期間、編集部で当時の「市民運動案内板」などの担当をしたことがある。当時の社長に編集部員なのだから企画を出せと言われたが、希望していない突然の異動で記事の企画など考えられず、結局一度も出さなかった。案内板の担当も楽しくはあったが業務部に戻り、営業事務的な担当になった。書店さんとのやりとりだとか個人の方からの注文書籍をどう効率よく梱包し送るか、という仕事が私に合っていた。
 20年以上前、入社した年の暮れの号の本欄に、ひとの好みはそれぞれなのだからということを書いた。忘年会の季節に酒が苦手なことを同情されるがそれならたとえば甘いものだとか他の楽しいものなどが苦手だというのを私は気の毒に思うが、と書いたら、読者からサブカル系のミニコミが送られてきたことがうれしかった。
 これからも角度を変えて物事を見るようにしたい、想像力を持ち続けたいと思う。(佐藤恵)

▼1997年、安室奈美恵が結婚発表会見で「丸山(結婚相手SAMの本名)奈美恵になります」と言ったとき、安室奈美恵には「結婚しても安室奈美恵です」と言ってほしかった――とこの欄で書いたら、「誰もが夫婦別姓を望んでいると思うな、このボケ」といった要旨の手紙を女性読者からいただき、ほおーと思ったことを思い出した。当時はまだ「結婚前に妊娠なんてとんでもない」という倫理観の時代。妊娠&結婚を同時に発表するなんて、前代未聞のことだった。「できちゃった婚」という言葉が定着したのもこれ以降で、今やできちゃった婚なんて珍しくも何ともない。
 とりたてて安室奈美恵ファンというわけではなく、年齢的にもアムラーとは無縁なのだが、40歳という若さでの引退を決めたことに、すさまじい潔さを感じた次第。大事を成し遂げた人間は、引き際もわかっているし、去り際もまた美しい。そういう人に、私はなりたい。(渡辺妙子)