週刊金曜日 編集後記

1200号

▼労働者が、出資者でも経営者でもある協同労働。魅力的には違いないが、映画『Workers 被災地に起つ』では、労働者自らが、経営者的思考である財務感覚を持つことがそんなに簡単ではないというシーンがあって身につまされる。
 (株)金曜日は、協同労働ではないが、社員株主制度のため、総会を通じた決定に参加できる点は同じ。だが、経営者の一員としての自覚を自身に問うなら、まだまだ不足していると言わざるを得ない。
 前掲の映画には、東日本大震災で、仕事を一からつくりだしていかざるを得なくなった人たちが、それを協同労働というかたちで実現しようと試みる姿が描かれているが、仕事づくりが地域の再生にもつながっていくところは、労働とは、人と人のコミュニケーションにほかならないという基本的なことを再認識させてくれる。金曜日の脱皮・再生もまた、ここにしかないと信じている。(山村清二)

▼みなさんは雑誌についてどのようなイメージがあるだろう。私にはもっとも自由なメディア、だ。名刺1枚でいろいろな人に対等に会い、型破りな企画も競い、その結果を活字や写真やデザインで表現する。それがジャーナリズムと結びついて化学反応もする。昔から日本の総合週刊誌は中高年の男女が読むものだったが、私が1997年にたまたま手にした『週刊金曜日』は違っていた。面白さとは自分の責任で判断するものだが、日本にも本誌編集委員はじめ、竹中労や立花隆、米国のハンター・トンプソンなど、雑誌を舞台に活躍をしてきた。私にとって雑誌はともかく自由に、しかし知的に生きたくて行きついた場だが、われわれ世代の責任か。融通無碍だったはずの業界が内弁慶で大人しくなり、若者は端からネットに流入している。「社会」の危機は常に人に原因があるものだ。(平井康嗣)

▼今週号の「私たちは黙らない!」で金子雅臣さんが指摘されているが、普段、差別反対や人権尊重を唱えながらも、自らの差別意識やハラスメントに自覚のないリベラル系男性がいるのは事実だ。
『WiLL』10月号の石原慎太郎・亀井静香両氏の対談で「そもそもセクハラだパワハラだと騒ぐのはおかしい」「男性社会をどんどんなくそうとしている。ナヨナヨした女性社会になったら、いつか日本人は絶滅してしまう」とのトンデモ発言がある。ハラスメントに対して「大したことじゃないのに騒ぎすぎ」とか言っている人たちは、この両氏と同様の価値観なのだと自覚してほしいものだ。日頃自らが批判している行為を自身がやっていることに無自覚な人は見ている方が恥ずかしい。
 金子さんのご指摘通り、今後、社会のハラスメント規制は進む。自覚なき者は生息場所を自ら狭めるだけなのだが。(宮本有紀)

▼定期購読期間の一部廃止につきまして、いろいろとお問い合わせを頂戴しています。割引をなくしてもよい、というご提案もいただき、お心遣い痛み入る次第です。2・3年分の購読期間廃止は、割引率の問題のほか、更新率が低いという問題もございました。更新時の4万円以上の負担が大きく影響していると判断、今回の措置となりました。更新が煩雑でしたら、金融機関からの月々の自動引落しもご検討いただければ幸いです。
 本誌も参加する「平和の棚の会」。結成から10周年を記念して東京堂書店神田神保町店にてトークイベントを行ないます。9月27日(木)斎藤貴男さん×三宅勝久さん、10月3日(水)高橋哲哉さん×徐京植さん、10月4日(木)斎藤美奈子さん×早川タダノリさんで、いずれも19時開演。詳細とお申し込みは東京堂書店サイトをご覧ください。(原田成人)