週刊金曜日 編集後記

1194号

▼国際司法裁判所裁判官・小和田恆氏の辞任に伴う補欠選挙が6月22日実施され、東大大学院教授の岩澤雄司氏が当選した。岩澤氏はこれまで国連自由権規約委員会委員や委員長を務め、ジュネーブ、ニューヨークと忙しく行き来していたが、日本に戻れば、暇を見つけてはテニスを楽しんでいることはあまり知られていない。ゲームでの的確な指示は、時に、コーチでもないのに「コーチ!」と声がかかるほどの腕前だ。オランダに居を移すため、仲間は「ますます遠い人になるね」と当選を祝福しつつも、出発が惜しまれている。
 かつて、自由権規約委員会からは、特定秘密保護法など人権を無視する日本政府の政策にたびたび「勧告」が出されてきたが、安倍首相は勿論、その周囲は「組織」を守ることに汲々とするばかり。「組織」はそれを構成する人たちによって良くも悪くもなる。岩澤氏の当選は改めてそのことを考えさせてくれた。(柳百合子)

▼梅干しを買ったことがない。母の作ったものをずっと食してきた。だが永遠に作れるわけはなく、いずれ在庫も尽きる。その時、本誌昨年6月2日号の「買ってはいけない」で掲載された「調味梅干し」のようなものは食べたくないと思い、昨年から梅干し作りを始めた。
 作業自体は大した手間はない。梅を下ごしらえして漬ける容器を消毒し、塩と交互に積み重ねて重石をするだけ。塩の働きで透明な梅酢があがってきたときの喜び、ざるに広げて干すときの芳香は作り手へのご褒美だ。あとは太陽がいい匂いの梅干しにしてくれる。 作った年は食べずに寝かせ2~3年ほどおく。先日、今年の梅干しを仕上げた後、昨年の梅を味見した。1年ものでも作りたての時よりまろやかな味になっていたので嬉しくてニヤニヤしてしまった。時間のする仕事も偉大だ。自然の技に比べたら人間のできることなんて大したことないなと梅干しを食べながら思った。(宮本有紀)

▼今、富士フイルムとマグナム・フォトによる共同プロジェクト「HOME」が東京・代官山ヒルサイドテラスで、世界7都市を巡回する写真展の一環として開催されている。(7月30日まで・会期中無休)。このプロジェクトにはマグナム・フォトより写真家16名が参加し、「HOME」をテーマとした写真作品が展示されている。
〈「HOME」という言葉には、物理的な生活のスペースとしての意味だけでなく、精神的なつながりや拠りどころという意味や、あるいは血縁的・地域的・社会組織としての意味など、さまざまな概念を有しております。〉(解説より)。
 今度、実家に帰省する時には、久々にカメラを手にして、自分なりの「HOME」と向きあってみようかなと思う。ファインダー越しに考えることで、あらためて自分の原点や忘れかけていた過去の残像が立ち上がってくるかもしれない。それが心地いいものなのかどうかは分らないが。(本田政昭)

▼ロシアW杯はブラジルに勝ったベルギーをフランスが破り決勝に進んだ。決勝の相手は私が推していたクロアチア。前半優位に戦ったがフランスに逆襲され力尽きた。
 サッカーの試合でお金を賭けて勝敗予想をする、いわゆるトトカルチョは知られているが、日本では賭博場の開場にお墨付きを与えるカジノ法案が成立した。カジノなんて必要ない。国民が豪雨災害で苦しんでいるという時に、優先すべきは何なのか、この政権は全くわかっていない。血の通っていない政権は即刻退陣すべきだ。
 さて、W杯が終わってJリーグに新加入したイニエスタ選手が最初に覚えた日本語は「アツイ」だそうだ。暑いと食べたくなるのが冷たいソーメン。氷水に浸ったソーメンを箸で水切りしながらすするのが当たり前だと思っていたが、水につかると麺がふやけるので、ざるにあけて食す方が良いらしい。この食べ方の違いは、地域に関係なく、家庭によるとか。あなたはどちら派ですか?(原口広矢)