週刊金曜日 編集後記

1178号

▼大学生の時から原発には次の問題があると考えていました。(1)発電コストが(以前は巧妙に隠されていましたが)高い、(2)使用済み核燃料の処理を含め技術的に確立していない、(3)労働者の被曝を前提にしている、(4)過酷事故の危険性、です。さらに(5)カネと権力によって地域や民主主義を破壊することを『日本の原発地帯』(鎌田慧著、初版1982年、2011年に『日本の原発危険地帯』と改題して再刊)で知りました。
 鎌田さんのルポは全国の原発を取り上げましたが、先週号から小誌で短期集中連載を始めた『原発の来た町』(斉間満著)は、伊方原発(愛媛県)に絞り込んでいます。ひとつの原発で起きたことを深く知れば、類比的に他の原発について考えることができます。連載は、元の本の一部にすぎません。ぜひ、電子版(キンドル本)をお読みください。 (伊田浩之)

▼学校法人森友学園への国有地売却問題は財務省による公文書改竄、安倍晋三・昭恵夫妻や複数の政治家の関係が明るみに出て、安倍政権ぐるみの事件に発展した。議会制民主主義を崩壊させる公文書改竄の"下手人"については国会で追及が続くが、誰のためにやったのかはすでに多くの国民には答えが出ており、それが支持率急落に現れている。「安倍事案」であったからタダ同然で国民の財産が売却され、それを隠すために公文書が改竄されたということだ。
「いい土地ですから、前に進めてください」と昭恵氏が言ったのか言わなかったのか。3月23日に大阪拘置所で籠池泰典氏に接見した国会議員によれば、それら間違いのない事実だと述べたという。証拠隠滅の恐れがあるとして昨年7月から8カ月間も勾留されている籠池被告だが、証拠隠滅していたのは財務省だった。大阪地検はなぜ財務省に強制捜査すらしないのか。これも「安倍事案」だからだとしたら、行政も司法も私物化されていることになる。(片岡伸行)

▼講演会の告知を2点。一つ目は現在制作中の単行本刊行を記念し「沖縄は孤立していない」と題して、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんと『ジャパン・フォーカス』エディター・乗松聡子さんをお迎えして、東京・文京区民センター3A会議室で開催。日時は4月19日(木)18時開場、18時30分~20時30分。資料代1000円。問い合わせ先はTEL・03・3221・8521まで。
 二つ目は「金曜日文庫」第24回目。「創価学会秘史」をテーマにジャーナリストの高橋篤史さんをお迎えして、編集委員の佐高信さんと創価学会の知られざる側面を照らします。日時は4月20日(金)18時開場、18時30分~20時。場所は、寺島文庫(東京都千代田区九段北1-9-17寺島文庫ビル1階)。参加費は1000円(1ドリンク付)で先着30人、要申し込み。申し込み先はFAX・03・3221・8522、またはMail・book@kinyobi.co.jpです。2日続けてとなりますが、それぞれご参加をお待ちしてます!(赤岩友香)

▼大日本帝国がその敗戦において、自ら責任を取る者がなかったように、安倍首相や保守論壇人の籠池夫妻への手のひら返しは教育勅語の「朋友の信」のありようを見せつけるものであった。文書改竄問題での閣僚の無責任ぶりもそれに連なるものだろう。
 後景に押し退けられてしまった感があるが、森友学園問題の当初の問題点とは、教育勅語の暗唱や、児童虐待、ヘイトスピーチなど、およそ民主主義の国での教育とはかけ離れた教育を行なう籠池夫妻と、現役の総理大臣が親しくしている点にもあったはずだ。天皇への忠誠を誓わせる命令をなんの疑問もなく崇敬するような態度が民主主義と相容れるはずもない。公文書改竄が民主主義の危機ならば、このような教育に接近する首相の存在もまた民主主義の危機と強く指摘されなければならない。この問題で安倍首相の進退を問うことができないならば、日本社会が大日本帝国と決別したと胸を張って言うことはできないのではないだろうか。(原田成人)