週刊金曜日 編集後記

1176号

▼2年越しの"森友疑惑"追及の闘いで、佐川宣寿国税庁長官を辞任に追い込んだのは、『朝日』のスクープだけでなく、地検への告発や「納税者一揆」など、粘り強く追及し続けた市民の力だ。
「公表情報が歪められている」
「国の言うことは信用できない」
 今回の森友「決裁文書」改竄問題や、先の「働き方改革」データ捏造問題への怒りの、はるか7年前、2011年に多くの市民が共有した怒りであり認識のはずだ。
"安倍一強体制"下、どれだけ強行採決や強権的手法を繰り返しても選挙に勝ち続ける自公政権に、脱原発をはじめ、11年以降の「運動」はどう抗ってきたのか。私たちは何を学び、何を得、何を失ったのか。改めて考えてみたい。
 今なお、焦点の安倍昭恵氏の証人喚問さえ拒否し、すべてを財務省の責任に転嫁して逃げ切りを図り、この後、「働かせ方改革」や憲法改悪に突き進もうとする安倍政権をゆるさない闘いは、これからが本番だから。(山村清二)

▼以前、新聞表記では男性の敬称が「氏」で女性の敬称は「さん」だった。私が20代の頃、『AERA』もそうだったので、統一してほしいと当時の編集長に手紙を書いたのだが、表記はしばらくそのままだったから失望したことを覚えている。そのほか社会で流通している「夫人」「女優」「女医」「女子アナ」といった性の非対称性表現も気になっていた。言葉は社会を映す鏡だ。非対称なのは対等でないことの反映ではないかと。
 だから昨年、言葉にセンシティブな20代の若者たちが『広辞苑』の「フェミニズム」「フェミニスト」の語釈を現代にふさわしいものにしてほしいと声をあげた活動に共感したし、嬉しくもなった。
「フェミニズム」「フェミニスト」とは何か。学術的な定義は別にして、対談で落合恵子さんと佐多稲子さん(仮名)がそれぞれ定義している。なるほど、この定義を考えることはつまり、自分はどんな社会を目指すのか、につながるのだと気付かされた。(宮本有紀)

▼3月5日から「週刊金曜日オンライン」というwebサイトが立ち上がりました。ヤフーなどでも『週刊金曜日』の記事を単発的に配信してきましたが、より『金曜日』を理解してもらうためには、記事のまとまりを提示できる独自サイトを構築し、メディアの特徴を知ってもらう必要があると考えました。また週刊誌を買う習慣があまりない読者層にも『金曜日』としての事実や視点などを届けたいこともありました。現状では「オンライン」の記事のほとんどが紙媒体で掲載されたものですが、今後は時宜を得た独自記事なども増やしていき、本誌とも効果的に連携していく方針です。また、「オンライン」のページでは運営コストを補うため広告も掲載することにしましたが、表示されるネット広告は読者の閲覧履歴に連動する型の広告であり、小誌が広告に配慮して言論を曲げることもありません。ジャーナリズムや言論の現代的意味を真摯に考えつつ、しぶとく書いていきます。(平井康嗣)

▼左の奥歯が痛むので近所の歯科医院に行った。20年ぶりに歯を診察してもらう。問診票に書いた社名を見て「金曜日に働いている方かと思った」と勘違いされた。「いいえ私は毎日働いていますよ。株式会社金曜日です」。その後、歯のレントゲン撮影と写真を撮った。これで、行き倒れになっても身元不明にならずにすみそうだ。
 TVドラマ「アンナチュラル」は法医学ミステリー。物語の舞台となるUDIラボの所長は震災の遺体身元調査がきっかけでラボ設立に奔走したという。死因を究明することで、思いもよらない事実が浮かび上がる。一話完結だが伏線もあり、見ごたえがあった。
 DNA鑑定で冤罪を証明した『孤高の法医学者が暴いた足利事件の真実』(金曜日刊)はまぎれもない実話である。丹念な取材で事件の真相が明らかになる過程は読みごたえがある。書店に注文するか小誌3月23日号に同封の振込用紙をご利用ください。(原口広矢)