週刊金曜日 編集後記

1172号

▼前回、家族法の特集をしたのは2011年3月11日号。発売日に大震災があったので忘れようもない。関連記事はその後も掲載したが特集としては7年ぶりとなる。この間、最高裁で違憲判断が出て改正された民法規定もあるが、夫婦同姓強制はいまだ変わらず。脱原発共々なんという歩みの遅さ。
 戸籍と氏の問題が「一部の女性の問題」と思われているとしたらそれは誤解だ。今回、登場された男性たちの発言からも、女性だけの問題でもイデオロギー問題でもなく、どなたにも関わる問題だということが伝わると思う。
 10日発表の最新内閣府世論調査では、選択的夫婦別姓に賛成が42・5%と増加し、反対の29・3%を大きく上回った。そもそも人権課題に多数決論理をもちこんではならないのに、政府は「賛否が拮抗」などの理由で実現を避けてきたが、もう通用しない。戦後、家制度を解体したのに「戸籍」を「個籍」にしなかった言い訳の「紙がない」も今は通用しない。「戦後からの脱却」をするべきなのは憲法ではなく民法なのだ。(宮本有紀)

▼本誌2月9日号でインタビュー記事を掲載した、ベトナム「平和村」代表のニー医師。昨年、彼女は来日した際、ベトナム戦争による被害への日本の支援について感謝の気持ちを語っていた。しかし、日本はお礼を言われるような立場なのだろうか。
 ベトナム戦争では日本は米国を支持、沖縄にある米軍基地からは戦闘機が日々ベトナムに向けて出撃した。ベトちゃんドクちゃんの分離手術に日本も携わった一方で、枯葉剤のもとを辿れば製造には日本の企業がかかわっている。そして今でも枯葉剤の影響を受けた子どもたちが生まれている。
 近現代史はもちろん、戦後史も私たちが知るべきことは多くある。今年は1968年から50年。今週号の書評欄で取り上げた『1968』(筑摩選書)シリーズも文化からあの時代に迫った書だ。
 安倍政権が9条改悪を進める中、提示しなければいけない戦後史はまだまだたくさんある。ニー医師からもらったベトナムの人形を見る度に気持ちを新たにしている。(赤岩友香)

▼スーパーのレジに並んで、自分の順番になって会計を待っている。ふと後ろを振り返ると、早くしなさいよとばかりに次の人のカゴが目の前に。また、銀行ATMで混んでいても平気で振り込みを続ける人は、後ろが気にならないのかな。父は晩年、頭髪が薄くなったことを気にしてこう言っていた「俺の後ろに立つな」と。あんたはゴルゴ13かっ。背後から銃口を向けられ、いまだ国境を挟んで対立している韓国と北朝鮮。今般、韓国で開催される平昌五輪に北朝鮮が参加することになった。五輪後、政府間の対話が進展するかどうかは予断を許さないが、これを機に南北融和が進むかどうか。
 五輪開催から1週間。注目のフィギュアスケート男子シングルは技術点の高い金博洋選手とネイサン・チェン選手の金メダル争いとみた。羽生結弦選手の連覇はブランクがあるだけに難しい。ただ、羽生選手のコーチは金妍兒選手を金メダルに導いたブライアン・オーサーなので、コンディション調整は万全なはず。SPでぶっちぎれば勝機はある。(原口広矢)