週刊金曜日 編集後記

1158号

▼「自民堅調 希望伸びず」
 これは、衆院選公示日と翌日に『朝日新聞』が行なった電話調査などの結果を知らせる12日朝刊の見出しだが、選挙終盤になってもこの状況は変わらなかった。この、統計理論に基づくというRDD方式などの世論調査の結果がほとんど外れないのが不思議。電話アンケートに平日出られるのは高齢者などに限られる気がするのに、どうして全体を正確に把握することができるのだろう。
 わが家にも今回三つの新聞社から電話が入った。しかも1本は途中で選挙の区割りが変わっていたことに気づいた相手が「スミマセン。この調査は〇区のものなのでキャンセルします」。もう1本はこちらで早めに相手に間違いを教えてあげたのだが、1票の較差を是正する区割りなら、行政はもっと住民への周知を徹底すべきではないか。新党のにわか仕立ての立候補者が間違った場所で演説をしていたりしなかったか。無効票が出ないことを祈る。(柳百合子)

▼衆議院総選挙2017。自公の「大勝」「圧勝」......結果、「国民の信任」を得た安倍晋三首相とのことだが、本当にそうだろうか?
『東京新聞』の集計によれば、今回、小選挙区での自民党の得票率は、約48%。だが、議席占有率は、約74%にもなる。投票した人の2人に1人しか自民党には投票していないにもかかわらず、4分の3の議席を獲得。さらに投票率は53・68%で、有権者の約半数は選挙に行かなかった。つまり、自民党は有権者の4分1程度の支持しか得ていない。
 小選挙区制は死票が多い。1994年に小選挙区比例代表並立制が導入されて以来、その問題点はたびたび指摘されている。民主主義(民意の多様性の反映)の観点から、欧州では比例代表制色を強めているともいう。日本も本気で選挙制度の見直しを考えなければならないのではないか。が、今の選挙制度で当選した議員にその見直しを求めるのは、それこそ絶望的なのだろうか。(弓削田理絵)

▼日曜日の朝はいつも、認知症の女性を施設に迎えに行き、いっしょに教会へ行っている。これを書いている今日は投票日だったが、混乱させるといけないので、選挙の話はしなかった。彼女の1票はどうなるのか。親戚がときどき施設にくることになっているので、期日前投票に行っただろうか。
 先週、読者から高齢者施設での投票のやり方について、疑問を呈する電話があった。投票の際に施設職員のみで第三者の立ち会いがないなど、疑問を感じるやり方の施設もあるようだ。すでに高齢社会であることを考えると、多くの票がブラックボックスになっているのかも、と思うとぞっとする。
 明日は台風の影響で電車が動かないかもしれないと心配しつつ、テレビで選挙特番を見ていた。結果は自民の圧勝。若者の保守化などとも言われるが、だったらなおさらのこと、現政権にもの申す人々が高齢になってもきちんと投票できる仕組みがないと困る! と思ったのでした。(吉田亮子)

▼いたずらに北朝鮮の脅威を煽り、リベラル勢力を「こんな人たち」として排除。厳戒態勢の中、多数の日の丸が掲げられた秋葉原での安倍首相の最終演説。その光景は"おとなの塚本幼稚園"と揶揄されるほど異様なものであった。ナチスドイツのゲーリングは、国民を操る方法として「自国が外国から攻撃されると説明するだけでいい。そして平和主義者を愛国心がなく、自国を危険に晒す者と公然と非難すればいい」と述べている。麻生副総理の「ナチスの手口に学べ」発言は、あながち間違ってはいなかったのだろう。
「民主主義かファシズムか」これは小誌が先週号で掲げたキャッチだが、今回の選挙をファシズム国家への分岐点にしてはならない。今日が独裁政権から民主主義を取り戻すための出発点であり通過点なのだ。リベラルを軸に結集した市民のたたかいはこれからだ。
「憲法か戦争か」こんな単純で明快な選択肢はない。個人の尊厳、権利を守るために今私たち市民が為すべきことは......。小誌は来週号から護憲キャンペーンの展開へ。
「憲法をとりもどす」(尹史承)