週刊金曜日 編集後記

1137号

▼共謀罪の強行採決で思うのは、今後起きるだろう市民・労働運動に対する破壊的弾圧以上に、公安という「現代の特高」に対して何ら規制を加えてこなかった、私たちの責任だ。公安がいかに民主主義や人権、自由を踏みにじり続け、無法と暴力を繰り返しているかについては論を待たない。その公安がこれから共謀罪を手にしたら、いったいどうなるのか。だが、公安の牙が「過激派」や「総聯系」と呼ばれる人々に向けられる限り、メディアは公安の広報機関と化す。しかし考えても見よ。免許証と現住所が違っていただけで逮捕・家宅捜索され、20日間も勾留される国が先進国でほかにあるのか。なぜメディアは、この種の「捜査」をやめない公安に加担するのか。その恐るべきツケは、近々私たちに回ってこよう。戦後民主主義は、小林多喜二を虐殺した特高の誰一人も裁かなかった。これから回ってくるツケは、戦後72年間の無作為のそれでもある。(成澤宗男)

▼先日、「共謀罪」が熟議もなく強行採決された。もう自公維のやりたい放題だ。持てる者と持たざる者との格差は加速度的に肥大化していく。異論を軽んじる国ニッポン。ある意味、この国はもう「終わって」いるのかもしれない。
 5月30日に臨時増刊号「特別編集・皇國ニッポン」を刊行する。この間本誌で報道された「追及!森友学園事件」を中心に、「安倍政権と日本会議」「日本会議と憲法」など昨年大きな反響があった特集等を再構成し、森友学園事件の最新情報を3本、書き下ろしで掲載。定期購読とは別の扱いです。
 表紙のイラストレーションはラジカル鈴木さん。「(昭和の若者向け二大芸能雑誌)『明星』『平凡』みたいな感じで」という実に大雑把なリクエストを受け、見事なイラストレーションを仕上げてくれた。校了直前に「中央の女性の着ている服のボタンが逆なのではないか?」と思い、確認したところ、某幼稚園の制服をモデルにしているとのこと。園児の制服は男女共通でした。(本田政昭)

▼ファイルを暗号化し身代金を要求するランサムウェア「ワナクライ」は、瞬く間に150カ国20万件以上の被害をもたらしました。
 ウィンドウズの弱点を狙ったマルウェアは、シャドウブローカーズという集団が、昨年米NSA(国家安全保障局)から"盗んだ"ものが元です。イスラエルと共同でイランの核施設を攻撃した際に使われた、特殊なウイルスの一部もその中に含まれていたそうです。
 マイクロソフトは、「トマホーク」ミサイルが盗まれたのと同等の危機であると、NSAを非難しました。サイバー兵器(ウイルス、マルウェア等)を作り、盗まれても放置していたのです。経済的損失に限らず、人命をも左右するサイバー兵器を国家が作り、管理できない事態に陥っています。
 スノーデン氏が公開した情報では、在日米軍基地で活動するNSAに「思いやり予算」が支払われてきたことになります。サイバー兵器作成・運用に私たちの税金は無関係なのでしょうか。(樋口惠)

▼今年の流行語大賞は「忖度」で決まり、という話をよく聞く。ネットの予想でもトップ。そうなると受賞者は安倍晋三首相か、昭恵氏か。2人そろって、というのが一番よさそう。
 そういえば安倍氏は流行語大賞の常連で、「集団的自衛権」や「一億総活躍社会」、「アベノミクス」がここ数年、年間大賞やトップ10に選ばれている。「集団的自衛権」は受賞者が辞退したので名前が公表されていないが、安倍氏以外には思い当たらない。
 トップ10にぜひ加えてほしいのが「分身」。『読売新聞』の首相インタビューで述べた改憲案を国会で追及された安倍氏は、「あれは総裁としての発言。国会でするのは首相答弁」と開き直った。私人と公人を使い分ける昭恵氏と並べて「分身?」という漫画時評が『琉球新報』などに載った。
 ゴルフ仲間のトランプ大統領も疑惑もみ消しに苦戦のご様子。そろって辞めれば世の中明るくなる。そうなった時には、どんな言葉が流行るのでしょう。(神原由美)