週刊金曜日 編集後記

1136号

▼閣議決定をすれば何でもできると思い込んでいるバカがいたとすれば、その政権は国会を無視し民主主義を冒涜する独裁政権だ。閣議決定がすべて正しいなどと思い込むほど国民はバカではない。
 森友学園事件をめぐる政府説明に納得できない人の割合が、最新の世論調査では8割超。改憲質疑で安倍晋三首相が「ぜひ熟読を」(5月8日、衆院予算委員会)などと持ち出した自民党機関紙もとい全国販売紙『読売新聞』ですら82%に達し、納得しているのはいずれの調査でも1割前後だ。逃げ隠れする首相の妻・昭恵氏と森友学園との「ズブズブの関係」を見抜いている証左だ。小学校設置基準と財政法9条を歪めた疑惑は何一つ解明されていない。
 身勝手で疑問符が付く閣議決定や8割超の声を無視する安倍政権の国会運営は、疑問には誠実に答えるという民主的なプロセスの放棄だ。それはすなわち「国会の死」である。「戦争法」しかり、「共謀罪」そして「9条改憲」。私たちは今、権力の私物化と独裁化によって民主主義が破壊される現場に立ち会っている。(片岡伸行)

▼2012年末の韓国大統領選挙で当選した朴槿恵氏は、50代以上の世代が支持した大統領だった。今回の選挙は一転、20~40代が主に支持した大統領が誕生した。朴氏知人の国政介入疑惑の影響か、50代も文在寅氏支持に傾いた。
 とくに文氏支持者の多い20~30代は、文大統領への期待が高い。大統領就任後わずか数日間で、さまざまな政治改革に着手しているからだ。たとえば、これまで検察出身者がほぼ独占したきた大統領府民情首席秘書官(政府高官による不祥事の防止・調査など)に、ソウル大法学専門大学院教授の曺国氏を任命した。曺氏は政治との癒着の激しい検察に批判的な人物で、就任後すぐに高官の不正を調査する部署の新設を宣言し、とくに検察改革に意欲的だ。文氏も検察に批判的な姿勢を貫いてきた。
 また、朴前大統領が導入した国定歴史教科書を廃止し、就職難解決のために「働き口委員会」を設置すると発表。旅客船「セウォル号」沈没事故の再調査にも意欲を見せる。日本では外交政策ばかりが取り上げられるが、文氏の内政改革にも注目したい。(渡部睦美)

▼「簡単なアンケートで謝礼が出る。モデル撮影で有名になれる」などの誘い文句から始まり、「絶対バレない。実は誰でもやっている」と嘯き契約書にサインをさせる。そして過酷な撮影を強要。これらは今、社会問題になっているAV出演強要の手口のひとつだ。
 詐欺師の手口は万国共通なのか。彼らの甘い言葉や「あなたのため」という言葉ほど信用できないものはない。「東京五輪は、東北復興のため」「共謀罪制定は、テロ対策のためであり、この法律がないと五輪が開けない」「特定秘密保護法やマイナンバーは国民の情報を守るため」「憲法改正で高等教育の無償化が可能になる」「憲法改正は、国民の命を守るため」等々。
 息を吐くようにウソを付くのが詐欺師だが、よくぞここまで......。市民のためを思うなら、森友学園事件の関与を認め、有言実行、即刻退陣すべきだろう。
 さて、この度、そんな詐欺グループ「自民党」の詐術を笑い飛ばす書が小社から発売された。
『お笑い自民党改憲案』(金曜日)騙される前に一読を。(尹史承)

▼6月上旬は講演会が目白押し。
 まず一つ目は「金曜日文庫」第19回を6月1日(木)に開催。「北朝鮮で感じたこと」と題し、連休中に北朝鮮に行ってきた本誌編集部員の野中大樹と本誌編集委員の佐高信さんが語り合います。18時開場、18時30分~20時です。場所は、いつもと同じ寺島文庫(東京都千代田区九段北1-9-17 寺島文庫ビル1階)。参加費は1000円(1ドリンク付)で先着30人、要申し込み。申し込み先はFAX・03・3221・8522、またはMail・book@kinyobi.co.jpです。
 二つ目は「森友学園問題」をテーマに大阪府・摂津市立コミュニティプラザ3階コンベンションホールで行ないます。日程は6月9日(金)18時開場、18時30分~20時。登壇者は上西小百合・衆議院議員と作家の鈴木邦男さん、そしてこの問題を最初に追及した木村真・豊中市議です。資料代500円。予約は必要ありません。それぞれご参加をお待ちしてます!
 5月30日発売の臨時増刊号も準備中です。(赤岩友香)