週刊金曜日 編集後記

1134号

▼生来の性格からか、私は「曖昧」なことが苦手。なんでもハッキリと白黒つけたがる。恋愛でも「友だち以上、恋人未満」なんて関係はもってのほか! 微妙な状態に耐えられず、だいたい早い段階で決着をつける......で、ほとんどの場合、失敗するのですが(苦笑)。
 本号の「憲法」特集では、私にとって最大の「曖昧」な存在である自衛隊と憲法9条について、編集委員に寄稿いただきました。「交戦権」を否定し、戦力不保持を謳った憲法を持つ日本に、なぜ多大な"防衛力"を持つ自衛隊が存在するのか。その自衛隊が海外の戦闘地域まで行けるようになったのはなぜか......。日本国憲法施行から70年。今後、この問題をどう考えたらいいのか、その「答え」を探りたいと思いました。
 現実はそう簡単に「白黒」がつき、簡単に「答え」が見つかるものばかりではありません。それでも理想に向かって、歩んでいきたいと思います。(弓削田理絵)

▼日本国憲法の施行から70年。人間なら「古稀」にあたる。70年も前に戦争放棄・戦力不保持を謳い、国の枠を超え人類普遍の原理としての人権と世界の平和を見据えた理想を宣言し、しかも戦勝国側が「純粋にいいものを贈りたい」と敗戦国に草案を贈った背景を持つ。その意味で「古来稀」な存在と言えるのではないか。
 私はこの憲法が好きだが、一言一句変えるなという「護憲派」ではない。1章をはじめ変えたいところはある。ただ、大部分はまだ使えるものを捨てるのは忍びないという「もったいない精神」がわき上がる。13条も14条も19条も21条も24条も25条も28条も34条も36条も38条も76条も98条も99条も......まだ十分に使いこなしていない。埃をかぶっている条文がたくさんある。まずはこの条文を活かそう。新しくするのはその後でいいし、改正の議論を始める主体も、政府や議会ではなく私たち市民だ。
 憲法記念日は、どれだけ憲法を守れたか、ではなく、どれだけ憲法を働かせることができたか、を問う日にしたい。(宮本有紀)

▼「下段倶楽部」の矢崎泰久さんが、現在、大分県杵築市にお住まいの無着成恭さんに会う旅に出かけた。
 某新聞社の「おい老い対談」という企画なのだが、大分空港にほど近い所にお住まいの無着さんに会うためには、1000段以上ある石段を登らなければならない。
 自力300段で力尽きた泰久さん(84歳)。スタッフが背負ったが、背負った方も背負われた方も、団子となって落ちる恐怖に勝てず100段登ったところで座り込んだ。無着さん(90歳)も降りられないという(階段の真ん中で会っても仕方ないし)。しばし思案したが、にっちもさっちも行かず、杵築市まで行きながらの撤退となった。まったく「おいおい」である。
 少しは観光もしようと、豊肥本線で豊後竹田にある「瀧廉太郎記念館」へ。「荒城の月」のメロディを聞きながら記念館を出たら、筑紫哲也さんの大きな写真が何点もあってこっちを見て笑っている。廉太郎の妹が筑紫さんの祖母。筑紫にも笑われてしまったと、泰久さんは膝をさすりながらしきりにぼやいた。(土井伸一郎)

▼新刊『香害』の発売に合わせて言いたい事があるということで、渡りに船で当欄の順番を交代したわけですが、『香害』への皆の想いは十分届いているでしょうか? 交代の甲斐があり、無事春ドラマの初回チェックも完了しました。
 ドラマあるある=「医療ものと刑事ものはなぜか揃うことが多い」。今回も例にならって21時台は刑事ものがずらり。テレビの前で謎を解く毎日。今のところは「緊急取調室」が一歩リード。厚めのキャストも魅力的で、しかも前回から変わっていないところも高評価。取り調べに焦点を合わせているので犯人との駆け引きに見ごたえがあって、他の刑事ものとの差別化にも成功しています。次点は「CRISIS公安機動捜査隊特捜班」アクションシーンの恰好良さにくぎ付けになりつつも、守る対象も悪、敵も当然悪という悪に挟まれた中でどう着地するのか祈るような気持ち。結末への不安は「リバース」も。あとは「あなたのことはそれほど」の東出"冬彦"さんに期待中。(志水邦江)