週刊金曜日 編集後記

1131号

▼戦争犯罪の洗脳道具だった「教育勅語」を幼稚園児に暗唱させることに「感動」し、その学校法人が立ち上げようとした「安倍晋三記念小学校」の「名誉校長」に就任、その講演の際「100万円を寄付した」と国会で証言され、小学校の建設用地(国有地)払い下げをめぐる要望を受けるや「秘書」スタッフに問い合わせをさせ、財務省の「予算措置」などの方針をファクス回答させたことは、私たちの社会の常識と価値観に照らせば「関与」以外の何物でもない。
 立法府である国会がこれを「関与」と認めないなら、すべての辞書は虚偽になり、学校でもそう教えねばならず、刑事事件の犯罪要件や裁判所の事実認定も変質する。これを「関与ではない」と言い張るのは、世界中を見渡しても安倍政権と自民党と公明党(と、いくつかの独裁国家)ぐらいだろう。身勝手を通り越した、ほとんど犯罪的なこの詭弁は、言語と論理で成り立つ世界の全否定に等しい。「私や妻が関与していたら辞める」と国会答弁した安倍晋三は即刻、議員を辞めるべきだ。(片岡伸行)

▼大相撲春場所は、稀勢の里が千秋楽に照ノ富士に逆転優勝し、メディアは「奇跡」「感動」などと大はしゃぎ。だが前日、勝って首位に立った照ノ富士に観客から「モンゴルへ帰れ」とのヤジが飛び、これを『スポーツ報知』が「ブーイング」と報じたような完全アウェイの空気が続く中での結果だ。「奇跡」でも何でもないだろう。
 昨年成立したヘイトスピーチ対策法で、法務省が「〇〇人は祖国に帰れ」を適用事例に挙げるように、件のヤジは明らかなヘイトスピーチ。『スポーツ報知』が後日、ウェブサイトで「観客のヤジを記述した部分に、ヘイトスピーチを想起させる表現がありました」と謝罪したのは当然だが、ヤジを黙認した日本相撲協会は今日まで、何ら積極的対応をしていない。スポーツにおける民族差別の放置――文科省は4月3日になって、この件で調査する考えを示したが、現職の総理夫妻が、教育勅語を暗唱し民族差別を公言する学校経営者を賛美した国の空気と、根は同じではないか。(山村清二)

▼この欄は当番制で書いており、順番通りなら社内きってのドラマ好きSが書くはずであった。だが春ドラマの第1回をみてから書きたいという意向を汲んで私が書くことになった。謹んで新年度の開幕投手を務めさせてもらおう。
 それにしても先場所の新横綱こそドラマチックだった。負傷しても休場せず、千秋楽で勝ってまさか優勝するとは。ただ相手の照ノ富士もやりにくかったろうし、自身も左膝を痛めていただけに健闘を称えたい。稀勢の里は負傷した左が使えなければ、右でという相撲だった。ちなみに私も長年のパソコンの入力作業のせいか左肩に痛みが生じており、華麗なる?右のマウス捌きで補っている。
 亡き父は稀勢の里を贔屓にしていた。横綱になり、優勝したことを墓前に報告したい。墓は父が生前建てたものだが、家紋を勝手に考えて親族一同を当惑させた。ただ大きく刻まれた「ありがとう」の文字には何の違和感もない。こちらこそありがとう。(原口広矢)

▼森友学園問題を収束に向かわせようとしている安倍政権。約8億円にものぼる国有地の値引きの背景や、大阪府で認可適当の判断が下されるまでの詳細な経緯は明らかになっていません。日本維新の会代表の松井一郎・大阪府知事は、森友学園への行政調査が行なわれた際、「立入調査の結果によって大阪府警に告発する」と発言したことが問題になっています。"はしご外し"の裏に何があったのか。
 そこで元維新の上西小百合さんをお迎えして「第18回目金曜日文庫」を開催します。テーマは「森友学園問題と維新」です。聞き手は弊誌編集委員の佐高信さんが務め、4月20日(木)に開催します。18時開場、18時30分~20時です。場所は、いつもと同じ寺島文庫(東京都千代田区九段北1-9-17 寺島文庫ビル1階)。参加費は1000円(1ドリンク付)で先着30人、要申し込み。申し込み先はFAX・03・3221・8522、またはMail・book@kinyobi.co.jpです。皆さまのご参加をお待ちしています。(赤岩友香)