週刊金曜日 編集後記

1129号

▼今号では、前々から興味のあった移民問題について特集しました。坂中英徳さん、丹野清人さんのおふたりの意見を紹介しましたが、もっと多くの方の意見が知りたいですね。また改めて、さまざまな意見をご紹介できたらいいなと思います。
 多文化共生のモデルにもいくつかあって、たとえばひとつの国や地域にA、B、C、Dという異なる文化が交わることなく、独立して存在しているケース。もうひとつは数学の集合の円の重なりのように、A、B、C、Dが融合しあい、Eという新たな文化が生まれるケース。どれが理想的かはいわずもがなでしょう。
 移民問題というと、日本にくる外国人のことばかりが問題視されがちですが、受け入れる日本人側の問題も大きいのではないかと思います。多文化、多言語、多様性など、これから日本は多くの「多」を志向する社会にならなければいけないことを、この問題は示していると思うのです。(渡辺妙子)

▼在日米軍基地がある限りいつかはこんなことが起こるのでは、と何度思ったことか。「有事の際に在日米軍基地を攻撃する部隊の訓練が成功」したとの北朝鮮の弾道ミサイル4発発射は、それが現実のものになりつつあることを突きつけられた思いがしている。発射されたミサイルが、もし「原発」に落下してしまっていたら!
 かつて、自衛隊のイラク派兵や有事立法が成立したとき、全国の自治体に「無防備都市宣言」の直接請求運動が広がった。東京国立市でも直接請求がなされ、当時の上原公子市長が議会に賛成の意見書を提出した。
「たとえ国の姿勢は『戦争のできる国』であろうと、憲法9条を実現化させようとする『無防備による戦争放棄の街』が日本全土を包囲し、実質的な無防備による戦争放棄の国にならんことを」と。他の多くの地域がそうなったように否決となってしまったが、今回の事件で改めてその意見書の重みを感じさせられている。(柳百合子)

▼国有地払い下げ問題で揺れる学校法人「森友学園」。同法人が運営する大阪市の塚本幼稚園は、中国・韓国など隣国へのヘイトスピーチでも問題視されている。先月、「元々在日コリアンで、今は日本国籍の女性」が、同幼稚園の副園長から「韓国人と中国人は嫌いです」との手紙を昨年渡され、数日後に子どもを退園させたとのニュースを見た。同幼稚園はホームページにも差別を煽動する文言が見受けられるなど、事態は深刻だ。
 最近、塚本幼稚園に子どもを通わせている親に大阪で会う機会があったが、そのうちの1人が在日コリアンであった。ヘイトスピーチの実態を知らずに子どもを入園させてしまい、「絶対に自分に韓国の血が流れていることは打ち明けられない」と、幼稚園では日本名で通していると話してくれた。退園も考えているという。隣国への差別的な考え方で子どもたちを"洗脳"しているという点だけ取ってみても、この学校法人の責任は重大だ。(渡部睦美)

▼「教育勅語」という時代錯誤な言葉が国会で飛び交っている。結局、敗戦によっても天皇制を廃止することができなかった事実が、このような事態の背景にある。天皇という権威に徳目を指示され、それを実行することに疑問を抱かないどころか、善とさえ思える感性は、天皇の国事行為からの逸脱や退位をめぐっての立法への直接的関与などを好意的に受け止めるような感性とつながっている。
 3月8日の国際女性デーに行なわれたウィメンズマーチ東京に参加した帰路、編集部の宮本と、「教育勅語」に代表される保守的家父長的な社会を変えるには、もっと女性の意見を聞くべき、という話で盛り上がった。というわけで、女性読者会の立ち上げ、既存の読者会への参加促進を企画しています。ご興味ある方は、読者会担当・原田までTEL・03・3221・8521か、Mail・dokusyakai@kinyobi.co.jpへ、ご連絡ください。(原田成人)