週刊金曜日 編集後記

1128号

▼沖縄の石垣島を代表する詩人に八重洋一郎がいる。かれの作品に「先生」と題する一篇がある。
〈私たちの先生には障害者が多かった/片手だけの先生 そでがぶらぶら/ふとももから下がない先生 ズボンひらひら/けっして足がまがらない先生/歩くときもいつも気をつけ!/季節になると/ほっぺたが赤くふくらみ しりが大きくなる先生/顔の皮がひきつれて/いつも横っちょをむいていた先生/女の先生は/両手でふくらむほっぺたをおさえつけながら/これはどうしてもこうなるのだから/わらわないでね と 泣いていた/男の先生は/夜になると小さな宿直室で酒をのみ/センパイ われわれはどうすればいいのだ いったいどうなるのだ/なぜ こうなったのだ と 顔をゆがめて泣いていた/(幼いぼくらはわからなかったが)/沖縄戦のなれの/はて/若い 痛い 無惨な障害者が私たちの先生だった〉(『八重洋一郎詩集』(現代詩人文庫、砂子屋書房)。琉球弧の島々にはまだかろうじて、まるで質量をともなうような漆黒の闇夜がある。(内原英聡)

▼「どうしてきちっと答えてくれなかったのか」「私は犠牲者」と籠池泰典理事長はネット動画で己の正しさを主張した。この籠池氏の姿を見て思い出したのが、田母神俊雄氏やアパホテル周辺の面々だ。
 2008年に話を聞いた田母神氏支援の石川県の会社社長は、村山富市元首相だけでなく地元の大物自民政治家・森喜朗元首相も訴えた。理由は「右翼」などと森元首相に言われたから。確かに彼らは「右翼」ではなく「ウルトラライト」だった。この面々に共通する特徴が見つかる。「愛国者」という自己愛や妙な"純粋さ"。自己中心的な歴史観。その歴史観を基礎にした「犠牲者」「被害者」という自己認識。そして政治家への諦念。かつて自民政治が求心力を失う中、田母神氏が政治に出てきた。しかしメジャーにはなれず、安倍晋三や「たちあがれ日本」「維新」などが受け皿になった。しかし所詮"紙皿"。現実政治はカネファーストであり、アベやイナダは平然と嘘をつき裏切った。「ウルトラライト」の反動はまたどこかへつながっていくだろう。(平井康嗣)

▼韓国の朴槿恵大統領の罷免が決まった。朴大統領は失職。韓国民主化後、初めて弾劾によって現役大統領が罷免された。
 朴大統領と友人をめぐる疑惑発覚以降、毎週のように光化門前では朴大統領退陣要求デモが行なわれていた(朴大統領擁護デモもあった模様だが)。ほぼ毎週末、ソウル近郊からデモに通っていた知人は「朴槿恵のせいで大変......」とこぼしていたが、「最後まで(朴大統領が辞めるまで)続けないと!」と無責任に言う私に対して、力なく笑っていたことを思い出す。オンニ、これで少しはゆっくりできますね!
 一方、ある先生は「これから(韓国)国民は試される」と。今は、朴大統領退陣で盛り上がっているが、次の大統領を選ぶとなると、いろいろと難しいことがあるという(難しい話になると韓国語すべて理解することができず......)。
 翻って日本。「安倍晋三記念小学校」疑惑で、盤石のようにみえた安倍政権にも綻びがちらほら。日本の"国民"も試されているように思う。(弓削田理絵)

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