週刊金曜日 編集後記

1114号

▼11月25日は女性に対する暴力撤廃国際日。日本でも毎年11月12日~25日は「女性に対する暴力をなくす運動」期間で、関連イベントが行なわれる。その一つ、被害当事者も参加して暴力廃絶を訴える「むらさきパレード」を取材した時、列に同行する警官に「なぜ紫なんですか」と質問されたことがある。(自分で調べろ、とは言わず)非暴力を象徴する色だからと言うと「なるほど。お子さんの参加も多いですねえ」などと関心をもったようだった。彼だけでなくこのパレードに伴う警官たちは総じて感じがよかった。かつて福島の女性たちを中心にした反原発デモでも、同行の警官は「東電本店前でとまれるようにします」と言い、列が横断歩道で途切れないよう配慮を見せていた。
 丁寧な対応は嬉しいが、「可哀想な女性と子どもたち」だからかなとも思う。これが「男性社会に抗議!」的なデモだったら全く違う対応かも、と疑念を抱く。だってそれくらい邪険に扱われているからな、女性の人権は。(宮本有紀)

▼誰しも、国政に関して発言する自由はある。だが、人の生死に係わる事項だけは、慎みがあってしかるべきだ。安倍晋三が執着する集団的自衛権行使のみならず「駆け付け警護」も、結局は自衛隊員が国外で誰かを殺し、あるいは殺される状況に送り込む結果をもたらす。隊員は殺されずとも、人を殺める行為に手を染めたらどれだけ精神的苦痛になるかは、自殺者が戦死者より多い米軍の帰還兵の実態を見れば明らかだ。安倍のみならず自衛隊の海外派兵の旗振り役を演じた稲田朋美や櫻井よしこ、日本会議の「長老」たちといった面々は、戦闘のための肉体的条件を最初から欠いていることもあり、絶対に戦場に行く必要のないことを約束された上で、「安全な場」で隊員が生命の危機にさらされる目にあうようはやしたてているのに等しい。これは、不道徳ではないのか。もし戦死したり自殺する隊員が出たら、その遺族を前にどのような顔ができるのか。こうした右翼政治家とその追従者たちの醜悪な「お気軽さ」だけは、実に耐えがたい。(成澤宗男)

▼「あした世界が終わる日に一緒に過ごす人がいない」......。
 以前、紀伊國屋書店で100冊の小説を選び、その書き出し部分のみを公開し、著者名やタイトルなどを隠して本を購入してもらうという挑戦的な企画があった。
 そして現在、岩手県のさわや書店でも同じような仕掛けで好評の企画がある。こちらは1冊だけのノンフィクションだが、紀伊國屋同様、情報をオリジナルカバーで隠し、「先入観にとらわれず本を開いてほしい」で売る潔さ。わかるのは810円という価格だけ。
 話題書やランキング本しか売れない時代と書店員は嘆く。消費者は、誰かと一緒のものでないと安心できないし、誰かが高評価したものでないと共感できないという。そこに主体性はない。そうして個は埋没され、全体主義的な考えに取り込まれていく。
 今回の書店の企画が好評なのは、情報の氾濫や都合の良い情報のみを選択する消費者に対するアンチテーゼだろう。誰かの評価は、誰かの評価でしかない。(尹史承)

▼「トランプ・ショック」がまだ収まらない日本だが、自国を見てみれば、私たちの"リーダー"の選び方のセンスのなさにもゾッとします。そんな中、今年は「脱原発」を掲げる2人の県知事候補が当選しました。彼らの勝利に来年以降の闘いのヒントが隠されているのではないでしょうか。
 そこで今年最後の「第15回金曜日文庫」のテーマは「鹿児島県・新潟県知事選を考える」です。聞き手は弊誌編集委員の佐高信さんが務め、ルポライターの鎌田慧さんをお招きし、12月2日(金)に開催します。18時開場、18時30分~20時です。場所は、いつもと同じ寺島文庫(東京都千代田区九段北1-9-17 寺島文庫ビル1階)です。参加費は1000円(1ドリンク付)で先着30名、要申し込み。申し込み先はFAX・03-3221-8522、またはMail・book@kinyobi.co.jpです。皆さまのご参加をお待ちしています。(赤岩友香)