週刊金曜日 編集後記

1112号

▼「北京秋天」に誘われて、北京に行きました。
 行ってビックリ、レストランやお店では、人々は支付宝(アリペイ)やアップルペイで支払いをし、タクシーに乗りたいときは滴滴アプリで呼び(正確にはタクシーではなく滴滴に登録している車)、支払いはもちろんアリペイで。在住の友人いわく、滴滴のドライバーは高収入なので、転職する人も多いという。高鉄(高速鉄道)に乗れば、日本の新幹線や、日本の新幹線技術を導入した台湾高鉄と比べ、揺れがはるかに少ない。走行中の地下鉄車内からは、トンネルの壁に映し出された広告が静止画のごとくバッチリ見える。お店でスタッフを呼びたいときは「ニイハオ!」。ここは欧米か? と思うくらい、人々のマナーも様変わりしていたのでした。北京女子も男子もおしゃれだし。
 中国の技術革新の急激さは日本にも伝えられていますが、その一方で中国の技術力はまだまだと言う人もいます。でも実は、日本が置いてかれているんじゃないかとも感じたのでした。(渡辺妙子)

▼アイドルグループ「欅坂46」の衣装がナチスドイツの軍服に酷似しているとして物議を醸している。サイモン・ヴィーゼンタール・センター(SWC)からの抗議を受けて、運営会社とプロデューサーはかたちだけの「謝罪」で幕引きをはかっているようだ。ナチスを模した意匠やナチス擁護言説が日本で問題化するのは初めてではない。その都度、問題を矮小化したり、擁護しようとする連中がでてくる。今回は親イスラエル団体SWCさえ「反日」と罵る連中をネットで見かけるようになった。
 大日本帝国の罪への指摘を認めることをいやがり「反日」というレッテルを貼る日本社会。そのこと自体、戦前と現体制が断絶していないことが暗黙の前提となっているが、例外的に元同盟国ナチスドイツの悪行は認められやすいと思っていた。しかし、ひとたび自らの過ちということに話が及ぶとナチスに対する批判さえ「反日」と言われる現状がある。大日本帝国の悪行への反省を欠いたナチス批判など、自己免罪のための方便にすぎない、という思いを強くした一件だった。(原田成人)

▼先月、ラーメンチェーン「幸楽苑」で起きた親指の一部混入事件。チャーシューを切る機械で親指を切り落としてしまったのに、それを探すことさえもできなかったパート従業員。ラーメンを食べた客が気付くまで、親指はどこにあるかさえ不明だったという。「幸楽苑」は社長の給与を5カ月間、半額にすると発表したが、問題はそんなことではない。労働環境の改善こそまっさきに叫んでほしい。
 学生のとき、ある大手の定食チェーンで調理のバイトをしていた。驚いたのは、一緒に調理していたパート従業員が、トイレに行く暇もなく、お漏らしをしてしまったことが何度もあったことだ。それくらい、調理場は人手不足で回っていなかった。すき家のワンオペの問題もさることながら、賃金を安く抑えて店舗の利益をあげようとすると、どうしてもそのしわ寄せは、労働者にくる。指を探す余裕さえ、トイレにいく余裕さえもない。こうした人権侵害の労働現場はいまも変わらずある。「末端」で踏ん張る労働者がいてこそ会社は回っているということが軽んじられすぎている。(渡部睦美)

▼創価学会の公式サイトを開くと、牧口常三郎初代会長の略歴がある。「国家権力と対決した創価の厳父」とあり、「人道的競争を主張」「子どもの幸福こそ」といった小見出しが並ぶ。牧口初代会長は1871年新潟生まれ。北海道尋常師範学校を卒業し、同校の教諭兼舎監を経て、東京の白金尋常小学校など6校の校長を歴任した。説明によると、〈1928年、日蓮大聖人の仏法を知り、1930年11月18日に「創価教育学会」(創価学会の前身)を創立。教育改革、仏法に基づく生活革新運動へと展開した〉。しかし〈戦時下、宗教・思想の統制を図る軍部権力の手で1943年に治安維持法違反ならびに不敬罪容疑で検挙・投獄され、1944年11月18日、獄中で逝去した〉とある(文中の元号は省略)。
 翻って現在。創価学会員を支持母体とする公明党の志が気になる。ネット上では「沖縄ヘイト汚染が公明党にまで!? 名誉毀損もののデマを流す公明党大阪市議会議員」として、辻よしたか市議の言動を危惧する声もある。「一念無明の迷心は磨かざる鏡なり」。(内原英聡)