週刊金曜日 編集後記

1089号

▼この時期、日が落ちると香りが強くなり、存在を主張しているような匂蕃茉莉。とてもいい香りの花だが、花言葉は「浮気な人」。理由はおそらく花色が紫、藤色、白と変化していくからだろう。
 花言葉では変化を「心変わり」と捉えているようだが、そのままのほうがよかったのに変わってしまったということがある一方で、変わってよかった、変えなきゃいけない、というものもある。
 当たり前だが、いいものは時が経とうと変えちゃならないし、改善するべきものは潔く変えなきゃならない。原発推進政策、日本国憲法、家族法などをどちらに分類するかで社会の方向性が決まる。誰がどう判断しているかを見極めて国会に送る日が近づいてきた。
 匂蕃茉莉の英名は「yesterday-today-and-tomorrow」。昨日より今日、今日より明日と、よりよい世の中になることを願って、香りを楽しもう。(宮本有紀)

▼毎年8月15日は東京千代田区の靖国神社で「戦歿者追悼中央国民集会」が開かれる。「恒例行事」(同社広報課)なのだそうだ。日本会議と英霊にこたえる会の共催で第29回を数えた昨年は、第一鳥居と大村益次郎銅像の間に参道特設ステージが設置され、朝から多数の登壇者と参加者が会場を賑わせた。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は当時(8月14日に)発表されたばかりの安倍談話を持ち上げ、参加者に「安保法制の実現」と「憲法改正」を訴えた。
 2014年、そのステージ近くの木陰では、20代の若者が数人、額に汗しながら「改憲」への署名を呼びかけていた。「日本会議」のノボリがはためく。うち一人にアルバイトかと訊ねると、彼は「違います」と答えた。「自分もよくわかってなくて。大学の関係で誘われて......」といった調子で覚束ない。当人さえ「よくわからない」ままのみ込まれてしまうのか。日本会議は侮れない。(内原英聡)

▼ブルックさん(46~47ページ)は、たまたま、ピースボートの船が島に立ち寄ったので、着の身着のまま飛び乗ったという。同じマーシャル諸島でも、日本人漁民の被曝もあって広く知られるビキニ環礁に比べ、エニウエトク環礁については、ほとんど知られていない。核実験の回数は、ビキニよりも多く、被害も解明されていないのに、だ。
「エニウエトクの実態を、ひとりでも多くの人に知ってもらいたい、その一念で船に乗ったのです」と東京集会で話していた。そのため、日本滞在中の宿泊も、知り合った支援者の好意に頼るしかない上、再び島に帰るお金がないとも(その後、カンパで何とか帰島できたそうでよかった)。
 オバマの広島訪問にメディアは沸き立っているが、今このときも、米国の核実験による被曝者がまったく遺棄されている現実を改めて知ってほしい。(山村清二)

▼摂食嚥下障がい専門の看護師として成果をあげている、小山珠美さんがテレビで紹介されていた。胃瘻などの経管ではなく、口からの食事は視覚などを刺激し、脳の動きを活性化させたり、免疫力向上の働きをしたりする。そこで小山さんは、意識が混濁している患者も可能だとわかれば、口を清潔にし、身体を起こし、声をかけながらスプーンを口に運ぶのだ。
 さて、くも膜下出血で入院中の義父。起きている時間が少し長くなり、やっと嚥下のリハビリがはじまった。すると先日はゼリーをぺろり。少し前に、口からの食事を家族は希望していると伝えたら「無理」、栄養を入れている鼻の管を抜いてもいいが「あとは餓死を待つだけ」と言った医者がいたっけな。小山さんの活動を見て、あの医者はやっぱりおかしいし、病院任せでは生きる力は戻らないと実感している。(吉田亮子)