週刊金曜日 編集後記

1086号

▼日本帝国による朝鮮支配の凄まじさを垣間見ました。水俣病公式確認60年記念の特別映画会(水俣フォーラム主催、4月16日、東京・西新宿)で上映された『鴨緑江大水力發電工事』(1940年、モノクロ45分)を通じてです。水俣病を発生させたチッソは当時は新興財閥。<飛躍のために目を付けたのは、植民地朝鮮の手付かずの自然とただ同然の労働力だった。その電源開発の難工事を誇るために(略)作られたフィルムに焼き付けられていたのは、苛酷な肉体労働に従事する地元民の姿と、戦後A級戦犯として服役しながらも首相に登りつめた岸信介だった>(同映画会パンフ)
 映画の題材、水豊ダムは44年に完成、湛水面積は琵琶湖の半分に相当するという。陸軍幹部などの視察光景を挿入する国威発揚映画ですが、労働者の待遇など多くのことが読み取れます。同時上映は、原一男監督が10年以上撮影しているドキュメンタリーの特別編集版。完成が待たれます。(伊田浩之) 

▼13年前、日本がイラク戦争への後方支援という名の「参戦」を決めた時、初めて自分がこの国の主権者であると強く意識しました。自分が選んだ(ことになっている)政府への苛立ち、戦争への加担を止められなかった自分への怒り......責任の一端は、自分にもある。
 夏の参院選では、「18歳選挙権」が実施されます。10代の若者グループ、ティーズソウルのあるメンバーは、「社会への不満? あるに決まってるじゃないですか!」とちょっとムッとし、別のメンバーは「自分たちの未来を(自分たちで)作る」と話していました。なんとも頼もしい若者たちの登場。私も負けてられませんね!
 正念場の参院選。安保法制の廃案とともに、立憲主義を回復させるのか。主権者一人ひとりが問われているのではないでしょうか。さて、毎年恒例の「憲法」特集。今年は「18歳」の有権者と一緒に考えていきたい。ぜひ、お子さん、お孫さん、近所の子に小誌を薦めてください。(弓削田理絵)

▼「インテル困ってる」とネットで話題のインテルのリストラ。従業員の11%の1万2000人が職を失う。スマホ、タブレット等モバイル機器の売り上げが、PCの売り上げに取って代わり、主力製品であったPCの頭脳、マイクロプロセッサー部門が赤字になったからである。
 陰りの見られるPCの売り上げの一方、累計500万台も売れた、5000円台のラズベリー・パイ。この名刺大の基盤剥き出しのワンボードPCは、英国の財団法人が子どもの教育のために販売する。モニター、キーボードもなく、OSも入っていないが、無料の専用リナックスOSをインストールし、同梱のソフトを使い、デスクトップPCとしても、電子工作用としても使うことができる。
 独占的な大企業が売る高価なPC。結局は、中身のわからないブラックボックスである。こんなPCに使われるのではなく、使う側になれないかと、ささやかながら思う、この頃である。(樋口惠)

▼春ドラマ第一位はやはり期待を裏切らなかった「ゆとりですがなにか」。笑って笑って1時間。シリアスぶらず笑わせても充分社会派になれると再確認。主人公たちは見ている限り充分しっかりしていて"ゆとり"と揶揄するのも悪い気が。29歳の設定では"どっぷりゆとり"ではないからなのか、まあ、世代とは関係なく"ゆとり"的な人はかなり存在しているしなぁ。実はそこが狙いとか? ともかく応援しつつ笑わせてもらう予定。
 社内でも話題の「重版出来!」は裏の「僕のヤバイ妻」優先になりそう。懐かしいジェットコースター感と海外ドラマっぽさ感の今後が楽しみ。「火の粉」も怖いけど先が気になる。クロかどうかはもう少しわからない方がさらに怖かった気もするが、充分足下に闇を感じてぞわぞわ。
 癒し枠「ラヴソング」ヒロインが事前の期待以上。そして本命は「お迎えデス。」。まだ初回が見られていないけど福士君出てるのでそれだけで。(志水邦江)