きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「竈猫」 金曜俳句への投句一覧(12月21日号掲載=11月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』12月21日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【竈猫】
山国の夕暮れやさし竈猫
前世なら竃猫なる貌をして
竈猫うつらうつらとラジオ聴く
迷ひ猫とうとう竈猫になり
消し炭の形のままに竈猫
竃猫さざんくわのごと灰こぼす
風吹けば汽笛のやうに竃猫
竈猫密議に席を外しけり
白ワイン「竈猫って何?」と孫
足裏はけして見せずにかじけ猫
ゆっくりと猫のくつろぐかまどかな
路地裏にごろりと寝たる竈猫
竃猫英語数学嫌ひなり
竈猫無念に眠る遺跡掘る
竈猫技と額に祖父を見る
通夜二匹柩の側の竈猫
すこし寝て余さず食べる竈猫
目覚むれば今日生く辞令竈猫
かまどには隣りの猫も並びおり
しなやかに通夜を横切る竈猫
江戸の灰見るや旧家の竈猫
今し猫かまどのにほひ知るもなく
灰まとい現わる猫やおとろく子
帰りたき遠き日もありかまど猫
寝目覚めてそろり降りくる竃猫
へっついに薪入れる音猫離る
あたり賃ばあさん相手かまど猫
竈猫来て居座りし門跡寺
至福なる季節到りぬかまど猫
火の神はいま留守らしく竃猫
毛の焦げはあなたのそそう竈猫
婆さんをだましだましに竈猫
拍子木の遠のいてゆく竃猫
呼び掛けに耳も応えず竈猫
新婚の足を伸ばして竈猫
おとつひの野良ゆうゆうと竈猫
ビルの谷ぬっと顔出す竈猫
使ひ魔にならぬ腹なり竈猫
気がつけば観られていたり竈猫
点座る思いの儘の竈猫
するめ焼く知らん顔して竈猫
好物へ首だけ出たる竈猫
竈猫夢の中味に迫りたき
水瓶はほこりをためて竈猫
竈猫立入禁止文化財
御詠歌に眠りあづけて竈猫
落慶の大釜ありて竈猫
沢庵の樽遠ざかる竈猫
水を飲む音に薄目の竈猫
先客の竈猫追うベンチかな
裏木戸に灰猫まろび出でにけり
淋しさの果にも温み竈猫
竈猫フクマルの名で一生を
世の中がどうあろうとも竈猫
一つ伸びして現るる竈猫
どこまでも円く収まり竈猫
炬燵猫浮沈はげしき世であれど
座布団に竈猫いる仮通夜
竃猫問へば尻尾でうべなへり
永遠の眠りの淵の竈猫
竈猫闇に光れる火吹竹
かまど猫暖とる形呼ばないで
身をこがし顔を汚してかまど猫
袋路に身構へているかじけ猫
百年の厨清めて竈猫
枯れ木とりおまえも行くかかまど猫
音も無く雪降る夜の竈猫
竈猫エキシビションはエルマンボ
竈猫薄目開いて至福どき
へっついの灰をまといて逃げる猫
かまど猫の如き深夜の自画像
かまど猫酸いも甘いも灰かぶり
入口は出口なるかな竈猫
竈猫炬燵犬ゐる故郷かな
さつきより少し重たき竈猫
竈猫ミニスカートに目もくれず
母性にも乾きの混じる竈猫
朝焼けにあくびもらして竈猫
ばあちゃんとひまごと昼寝竈猫
パソコンの裏を見つけしかじけ猫
金銀目閉じてまあるく竈猫
猫の寄るかまどに代はるやもお(寡男)哉
夫婦といふ継続の謎竈猫
竈猫退けて香典供えけり
虹色の夢かもしれず竈猫
竈猫格子窓より陽が土間に
かまど猫今日はベッドかわれの宿
もの思ふ時ともにせむ炬燵猫
待つでなく待たすでもなく竈猫
竈猫地熱活用研究所
奥の間に母丸まって竈猫

【雑詠】
手作りの竹の筆筒一葉忌
笹鳴きを追うて古刹の奥の院

※雑詠句は募集していないので、選考対象になりません。