一一月三日、東京ドームで日本シリーズの第三戦が行なわれた。この日、「始球式」に登場したのは前アメリカ大統領、ジョージ・W・ブッシュ。アフガンを攻撃し、「大量破壊兵器」をでっちあげてイラク戦争を開戦し、多くの人々の命と生活を破壊し、奪った張本人である。九九年と〇三年、私はイラクに行っている。その時にできた友人の中には、開戦直後からずっと連絡がとれない人もいれば、戦争によって職を失い、障がいを持つ子どもを抱える若い父親もいる。
そのブッシュをよりによって始球式に呼ぶという日本の野球界の見識には開いた口が塞がらないが(誰か止める人はいなかったのか?)、そんな情報を聞き付けた私の周りの人々はすぐさま「戦犯ブッシュを裁く!」と題して東京ドーム近くでデモを計画。一一月三日、始球式に合わせて開催された街頭宣伝とデモに参加した。ちなみに一連の緊急アクションのタイトルは「賢介、ブッシュを撃て!!」。ブッシュが始球式でボールを投げる際、バッターボックスに入るのが日ハムの田中賢介氏だからだ。
まずは午後四時頃から水道橋駅近くで街頭宣伝。東京ドームに向かう野球ファンたちに対し、「チケットを持っているあなたたちが世界の声を代表してブッシュにブーイングを!」と呼びかける。反応は上々で、握手を求めてくる人もいれば、始球式にブッシュが出ることを知り、「なんであいつが?」と不快感をあらわにする人、「ブッシュだけじゃない! 小泉も責任を取れ!」と語り始める通行人もいる。
そうして午後六時前、私たちはブッシュ顔写真に「靴投げ」をした後、デモに出発。プラカードには「戦犯ブッシュを逮捕しろ」「ブッシュに “靴辱” を」「ブッシュはイラクの人々に謝罪しろ」などの言葉が躍る。デモ隊のボルテージは試合真っ最中の東京ドーム前で最高潮に達し、みんなで「ブッシュを許さないぞ!」「小泉を捕まえろ!」と叫びまくる。
そうしてこの日のデモは終わったのだが、参加者は一五〇人ほど。ブッシュの来日自体が知られていなかったということもあるだろうが、日本各地でデモや抗議行動が開催されたっておかしくないのにこの静けさはなんだろう。そうして翌日、ブッシュは早稲田大学で講演。「リーダーの教訓」について語ったのだそうだ。なんか、徹底的に馬鹿にされてないか?
北村肇編集長のコラム「一筆不乱」を公開しています。
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