現在位置
ホーム(最新号紹介) > バックナンバー > 風速計(詳細)

風速計

外交は勝ち負けではない(石坂 啓) 2010/10/8

 事業に成功している中国人知人が来日して、「東京が田舎に見える」と話していたと何年か前に妹から聞いたことがある。

「言ってくれるなァ」とそのときは笑ったが、その後東京の街並みを眺めていてふとその言葉を思い出すことが何度かあった。ビルが建ち並んではいるけれど全部がピカピカなわけではない。住宅は密集しているがみんなが「お金持ち」そうには見えない。人が多いことと活気があることはイコールではなく、公園に子どもの姿はない。

 いまアジアを旅すると、エネルギッシュな街の発展にかつての高度成長期の日本を彷彿とさせられる人は多いのではないだろうか。ちょっとなつかしく感慨深く。皮肉なものだ。二〇年前なら旅行者はたいていアジアの国々に、かつての日本の農村風景をダブらせてノスタルジーに浸っていた。「遅れている」と見くびっていた国に強気に出られて、アタフタと浮足立ったのが尖閣対応にも見てとれる。

 北京オリンピックと上海万博を経て中国は相当に自信をつけただろう。今回の問題で日本に「勝った」と思っている中国人は多いのではないか。夫はそれが「ムカつく」と怒っている。「いい気になりやがって」と、ちょっとした差別主義者が家の中に出現したみたいだ。しかし彼が怒っているのは、それら中国の対応が結局だれを喜ばせることになるのかという点につきる。

 しばらくナリをひそめていた右翼政治家たちが大はりきり。すわ有事だの離島防衛だの中国脅威論だの。ナショナリズムに火をつけることになるから上手にやってほしいというわけだ。都知事があからさまに中国を罵倒していたときは、テレビに向かって「バカじゃねーの!? オレと同じじゃねーか!」ときれた。なんだかマヌケな怒り方だが、家の中で悪口言ってるようなレベルの発言を政治家がするなということだ。

「公の場で言えないからみんな苦労するわけでしょ。言っていいならオレだって知事ができる」……ごもっとも。先日は報道番組でコメンテーターが堂々、「中国を揺さぶり返す一番いい方法は、憲法を変えることです」と発言していた。ア然とした。

 外交は勝ち負けではない。つきあっていくことである。中国が今後さらに経済大国化し米国と緊密化し、日本が敗北感を味わうようなことがたとえあったとしても、それくらいは想定の内ではないのか。

風速計一覧に戻る



編集長ブログ

編集長のコラムを公開しています。

きんようブログ

社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

おしらせブログ

購読中の方や書店様向け情報からニュース続報も掲載。イベントの動画や音声も楽しめます。

新刊のご案内

殺すな、殺されないために!
6月21日、戦争立法に反対する学生デモ(京都市)スピーチ集

著者:SEALDs KANSAI シールズ関西:Students Emergency Action for Liberal Democracy – s KANSAI =自由と民主主義のための関西学生緊急行動

殺すな、殺されないために!

【内容紹介】 SEALDs KANSAI(シールズ関西)が 6月21日に京都市内で行なった 「戦争立法」に反対する...


お金のギモン! 何で私に聞くんですか?

著者:斉藤賢爾

お金のギモン! 何で私に聞くんですか?

著者の斉藤賢爾さんはビットコインに代表されるデジタル通貨の専門家。 ですが、本書はビットコインの解説本ではありません。...


貧困なる精神26集
「戦争」か侵略か

著者:本多勝一

貧困なる精神26集

朝日新聞入社以来約六〇年、ジャーナリズムの第一線で書き続ける本多勝一。これまで数多くのルポを記してきたが、ジャーナリスト...


反知性主義とファシズム

著者:佐藤優・斎藤環

反知性主義とファシズム

知の怪物と気鋭の精神科医がカルチャー(AKB、村上春樹、宮崎駿)から 反知性主義がはびこる日本社会を読み解く。振り幅の...